まだ見ぬ国
一日中特別なことをする、わけではなかった。午前中は
終わりに、
(ありがとう)
そのあと、みんなで歌を歌った。キャロルも歌った。
歌うときは普通に言葉が出るため、全力だ。楽しんでいる様子を見て、周りも笑顔になる。
夏休み。町の中心部から離れた
大きな湖を一望できる場所に、お城のような家が建っている。
いつものように、大きな家で過ごすキャロル。
日当たりのよい場所にある
つり目の少女は、兄のやっているビデオゲームを見ていた。隣同士の椅子に座っている。
ほのぼのとした
「お兄様、そこは左ですわ!」
金髪ロングヘアの少女は、テンションが上がっていた。ゲームを見ているとき、プレイしているときは、よく
喜んだ両親は、ゲームを
「そうは言うがね、
整えられた短い金髪の少年は、正直に告げた。
近くで見ている母親は、ゲームに
「わたくしにやらせようとして……わざと失敗しているのではなくて? ブライアン兄様」
キャロルが言った。ゲームに関係することは、
「そう言いたいところだが、俺よりキャロルのほうが上手いんだな。間違いない」
ブライアンは、素直に妹を
「ブライアン、
母親が口を開いた。
「……」
妹は何も言わなかった。
「申し訳ありません。お母様。我が妹の
ブライアンは、
「分かっているのならいいです。普段どおり話してくださいね」
母親も、
「……お兄様、わたくしがやります。かわってください」
キャロルはゲームに夢中だった。
天井にシャンデリアがきらめく。壁には
大きなテーブルに、夕食が
ヨークシャープディングという、シュークリームのような生地のパン。ローストラムにはグレイビーソースがかかっている。
食べているときも、キャロルはゲームの話に夢中。
「……あのアイテムを取ったあと、急いで行けばいいのですわ」
口の中の食べ物を飲み込んで、キャロルは言った。
「なるほど。そういうことだったのだね」
妹が楽しそうに話す様子を見て、
「ぜひ私にも教えて欲しいですね。キャロル」
父親も微笑んでいた。
「子供の楽しみを
母親は、キャロルが答える前に父親をたしなめた。
「すまない。ジャスミン。楽しそうな様子を聞いて、
「教えて差し上げてもいいですが……わたくしは
十代前半の少女は、言ったあとで
「お
父親の言葉に、全員が優しい顔になった。
食事のあと、家族は一緒にビデオゲームをした。
一人がプレイしているのを三人が見る。キャロルはよく
お風呂から出た、パジャマ姿のキャロル。
自室のじゅうたんを
「まあ。これもJ国製でしたのね」
兄の持っているゲームソフトの多くが、J国で作られたものだった。子供からお
この世界には、国ごとの言葉はない。
とはいえ、文化や
別の国の日で衣装を着たことはあっても、そこに住む人々の、詳しい生活までは分からない。
(一体、どんな国なのかしら)
キャロルは、まだ見ぬ国に思いを
夏休みが終わり、9月になる。
ここは丘の上。町の中心からすこし離れた場所。緑が多い。湖もある。丘の下の大きな湖は見えない。
キャロルの家とは、反対側に位置している。
白いシャツ、緑色の上着に、同じ色のネクタイ、黒いスカートという
(家族と離れて、少しほっとした。そう思ったことが、悲しい)
セカンダリースクールでは、
廊下に
決められた時間内に必要な分量の
話すことに
(人の
昼食は食堂で食べた。
ディーナのほかにも、多くの生徒がキャロルに優しくしてくれた。
それでも、心を開く
言葉に詰まるのも相変わらず。
(離れていくかもしれないと思うと、言えませんわ)
キャロルは、ゲームクラブに入った。クラブ活動は、週二回。
叫ばないように気を付けていたキャロル。しかし、テンションの上がることが
やはり、自分のことは言わなかった。
お
いつの間にか、
言わなくても力になってくれる。
言わなくても、そばにいてくれる。
(わたくしの家が大きいから、仲良くしてくれているだけかもしれない)
11月の初めに、花火が打ち上げられる。
12月のお祭りが過ぎる。秋期の終わりになった。
長期の休みには、家族だんらんを過ごした。
みんなでビデオゲームをする。
父親に
春期は1月の初めごろから。冬休みの
休みを家族で過ごした生徒たちが、
家族や友人をないがしろにするわけではないが、ゲームをする時間が増えていく。
嫌いになったわけではない。
(そのときだけ、自分でいられる気がするなんて。ただの
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