第三章 勇気
居場所
ホテルのロビーで両親に
「……行くところがあるので、わたくしは少し一人で行動します」
「ゲームのお仲間と、約束をしているの?」
金髪の母親が聞いた。
「ええ……そのような感じですわ」
「分かった。迷ったらいつでも連絡するといい。飛んでいくからね」
金髪の父親が微笑んだ。
「……ありがとうございます。お父様。お母様」
まぶしい笑顔で、感謝の言葉が述べられた。
金髪ロングヘアの少女は、駅のほうへ歩き出す。
灰色の簡素な建物に背を向け、辺りを
キャロルには、どこに何があるのか分からなかった。緑を見つけて公園へ行く。白いワンピース姿で、
(
芝生と、木々と、すこし遠くに海が見える。
公園の中には時計が立っていた。
街に
右を向いても左を向いても、
「大丈夫ですか? もしかして、迷子ですか?」
薄いグレーのシャツを着た少年が、キャロルに話しかけた。
(自分を信じられないわたくしが、誰かを信用できるのでしょうか)
「違うのかな? 観光、じゃないな。レトロファイトの
自分と同じくらいの背。その言葉に、キャロルが反応する。視線の先にゲームセンターを
「……」
キャロルは何も言わなかった。
少年は、向かっているのがゲームセンターだと
ゲームセンターの中に入った二人。レトロファイトの
横向きの
二人は
少年は5
キャロルが相手を
2戦目。
少年は
3戦目。
お互いの周りを回るように移動して、キャロルが
「やっと……ハァハァ……会えた」
青い目の少女は、少年に
(こんなに、胸がドキドキするのですね。
落ち着くまで、待っている。しかし、離れる
寝てしまったのかと思った。
「きれいな髪だ」
自分の顔の横にある頭を
「起こしちゃった?」
体を離したキャロル。何も言わず、じっとアサトを見つめる。
「友達にもいるんだけど、
すこし
キャロルは
(嫌われてしまうかもしれない。頭の中が真っ白で、ほかに何も考えられません)
「わたくしのことを……嫌いになりましたか?」
「
キャロルは無言で
「
アサトは
「……誰にも言えないのです。わたくしは、勇気がないから」
「そうか、自分から言うのは
(それでもわたくしは、怖かった)
「両親にも言ってないのは良くないです。絶対に言ったほうがいい」
アサトは、
「……」
少女は一歩を踏み出せなかった。
「一人で言えないなら、僕も一緒に行きます」
「今日……アサトの家に
突然、キャロルが、関係のないことを言った。
「家出とはちょっと違うけど、そういうのは良くない。ちゃんと話さないと」
アサトは
「……これからお父様とお母様にお話しします。……一緒に来てください。話せたら、
キャロルは
薄いグレーのシャツ姿の少年は、しばらく考えたあとで、了承した。
両親のいるホテルに行くキャロル、と、アサト。
灰色の立派な建物に着いた。駅前では一番背が高い。
二人は中に入り、部屋を目指した。
その様子を、見つからないような位置からスーツ姿の人物が見ている。キャロルの家のメイドである。同じ飛行機に乗っていたのだ。
ホテルの外でキャロルが一人で行動する
メイドは何も言わなかった。
二人は、エレベーターで上に向かう。扉が開いた。
廊下にいる時点で、部屋の大きさが分かる。盛大なパーティーを開けるほどの大きさ。キャロルはチャイムを押した。まるで普通の家。
「あら。早かったわね。いらっしゃい」
ドアを開けたキャロルの母親は、優しい口調。最後はアサトに言って、微笑んだ。
「どうも。初めまして。おじゃまします」
短髪の少年が、すこし
中には
普通の家のように、ドアで部屋が仕切られている。キャロルたちは
白い部屋の中を、
海を見ていた男性が、
「ブライアンは、先を越されてしまったようだね」
キャロルの父親は笑った。
ソファも椅子もある。キャロルは座ろうとしなかった。
アサトも横に立っていた。キャロルの両親と、向かい合った状態になった。少年以外は金髪。少女はなかなか話せない。
「ええと。私は、ゲームの、その、フレンドで、アサトという者です」
しどろもどろに自己紹介した。
失礼がないようにと覚えていた
「……アサト様は、強くて、
色々なことを話した。短髪の少年も話に参加して、
キャロルの両親は、その様子を見ながら微笑む。会話に参加した。
少年は、少女が自分から言うのを待った。
キャロルはアサトの手を
「……お父様とお母様に、お伝えしたいことがあります」
「……わたくしは、言葉が上手く出せません。どんなに頑張っても、自分ではどうにもならないのです。……これが何なのか、調べました」
手が強く
「……
キャロルは、いまにも泣きそうな声。
母親が近付いていって、娘を
アサトは手を
「よく、自分から言いましたね」
母親は娘を
「頑張りましたね。もう、
優しい声で、父親が
「心配も迷惑も、どんどんかけてください。子供は親を心配させるのが仕事なのですから」
「そうですね。あまり心配できないと、
ガーディナー家の三人は、円形になって
アサトは
キャロルは、初めて自分の
「では私は、この辺で失礼します」
しばらくして、空気を読んで立ち去ろうとしたアサト。
「……
キャロルからは強い意志が感じられた。
「しかしですね、せっかく、こうして親子が――」
言い終わらないうちに、キャロルが話し始める。
「約束。果たしていただきますわよ」
「何か、約束をしていたのですか?」
イントッシュが聞いた。
「恩人ですからね。アサトさんは。何でも言ってください」
ジャスミンは嬉しそうだ。
「いえ、私は、何もしていません。キャロルさんが、頑張ったんですから」
「……さん
キャロルは自分の意見をどんどん言っていた。
「それなら、僕も
「それで、約束というのは何です?」
二人を見て微笑みながら、キャロルの母親が聞いた。
「……自分のことを話せたら、アサト様のお家に泊めていただく約束ですわ」
「話せなかった場合、帰れないから、という意味だと思ったんです。私は」
「ほう。アサト君は、
キャロルの父親が聞いた。
G国では、子供が一人で
「ええ。母がいて、夕方には、父も戻ってきます」
「それなら、いいでしょう。いってらっしゃい」
母親は、父親の意見が出る前に許可した。
「……」
キャロルは、父親を見た。
「反対しないよ。ホームステイだと思って、楽しんでおいで」
父親は、優しく微笑んでいる。
「……ありがとうございます。お父様。お母様」
キャロルは、心からの笑顔を見せた。
様々な
J国では当たり前の
キャロルとアサトは、アサトの家の前に着いた。入り口の近くに、
「
少年は
「
片手で持てる大きさの鞄を廊下に置いて、キャロルは靴を
「おかえり。早かったね。って、何? 何かの撮影?」
「G国からいらっしゃった、ゲーム仲間だよ。今度、大会あるでしょ? あれの」
薄いグレーのシャツ姿のアサトは、簡単に説明した。
「……ごきげんよう」
金髪ロングヘアの少女は、普通に
「ご、ごきげんよう? 何で
慌てている様子のアサトの母親は、改まって
母親を放っておいて、アサトは家に上がる。どこに何の部屋があるかを、キャロルに説明し始めた。続いて、自分の部屋に案内する。
「和風の家だと、よかったのですが」
「……何の問題もありませんわ」
キャロルが答えた。
家は、木の部分が多いフローリング。アサトの部屋も、フローリングだった。部屋の左奥にベッド、近くには窓がある。右奥には机と椅子。
キャロルの部屋よりも
置いてあるクッション。
キャロルは、ベッドに座った。
視線の先には本棚。たくさん本が
「
散らかしてはいない部屋の主が言って、キャロルの隣に座った。
びくっとしたキャロル。言葉にならないような、変な声を出した。
「どうか、しましたか?」
隣の少年は、
「……何でもありませんわ。暑いですわね」
金髪ロングヘアの少女は、
「そうですね。こちらの国は、気温が高いですよね」
アサトは
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