キャロルと王子様
多田七究
第一章 キャロル
お城のような大きな家
内容が、
話している途中で
息ができなくなり、
どうすればいいのか分からず、誰かが助けてくれないかと思いながら、自分から動くことを考えられなくなっていました。
あの日までは。
8分の1ほどの
水の
そこに光を照らす
一面の緑。丘や草原が広がり、
大きな湖から丘を上がると、大きな町がある。
道路のほかに、線路がほかの
町の外れ。大きな湖を一望できる場所に、お城のような大きな家が建っていた。壁は茶色のタイル。近くには
五歳くらいの少女と、よく似た七歳くらいの少年が、外で遊んでいる。
季節は夏。高原のため気温は高くない。
周りは
「おにいちゃん……ハァハァ……まって」
サラサラとした金髪をなびかせた少女は、少年に追いつけなかった。
「すまない。キャロル。大丈夫かい?」
短い金髪をきれいに整えた少年は、妹のほうへ歩く。
その様子を、二人の両親も幸せそうな顔で
つり目の少女は、浮かない顔をして考える。
(なぜ普通に話せないのか、分からない)
緑色のワンピースを着た少女は、家の中に入った。青い服の兄も続いた。
グレーの
家に入ると、
ダンスパーティーが
足元には、真っ赤なじゅうたん。
父親が、メイドにお茶の準備を頼む。
家族は
日当たりのよい場所。壁には、たくさんの絵が
「……これ」
キャロルは、母親に絵本を渡した。
そして、たくさん
隣の椅子に座った母親が、絵本を広げて読み始める。ひとつに
近くの椅子に座った父親は、息子と学校の話をしていた。金髪の二人は、似たような髪型。ラフな服装のはずなのに、
父親がふと話をやめ、娘を見る。
「キャロルも、あと少しで
絵本を読み終わった母親が答える。
「そうね。イントッシュ」
「ブライアンも、もう立派な
父親は嬉しそうに、息子の頭を
母親も嬉しそうだった。すこし声のトーンを落として言う。
「でも、この幸せな時間がずっと続けばいいのに、って考えてしまうわ」
娘は楽しそうな顔で、一人で絵本を見て考えていた。
(お家は大きいけど、パパは
柔らかい表情の父親。
「子供が
「ええ。そうね」
「と言いながら、私は、泣いてしまうかもしれないな」
「私も一緒に泣きますから、安心してください」
両親は笑った。
(王子様が現れたら、助けてくれるのかな)
キャロルは、
メイドがお茶とお菓子を持ってきた。金髪の少女はそちらを見なかった。
五歳のキャロルは、
これから通うことになる学校に
難しい勉強ではない。文字一文字ずつに結びついた発音を身につけ、正しい読み方を学ぶというもの。
椅子がない教室。
ほかの生徒もたくさんいた。
先生に集中するのは十分ほど。何人かの生徒が先生に教わっているあいだ、ほかの生徒は、塗り絵やゲームなどをして遊ぶ。
まずは、座ることと話を聞くこと、
この国では、言葉に出して言わないと分からない、という文化がある。
相手に何でも話すのは、当たり前のこと。
しかし、キャロルは自分から話すのを苦手としていた。
「……」
何も話さなくても、メイドは意思を
父親にも、母親にも、兄にも、自分からは、めったに話しかけることがなかった。とっさに声をかけられたときや、自分で話せると分かっているときは、話す。
(なんで、言葉が出るときと出ないときが、話す前に分かるんだろう)
たまに自分から話しかけると、周りの人は嬉しそうにする。キャロルはそれが嬉しかった。同時に、悲しかった。
周りは、
キャロルは、
(このままでいいの? どうすればいいのか、分からないよ)
両親は
(嫌われるのが、自分が必要とされなくなるかもしれないのが、怖い)
パンにベーコン、卵料理が
みんなは
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