第十六話:ワクチン完成! そしてさようなら、ウルの国


 天然痘の対処方法……それは俺の血だった。

 俺は海外青年協力隊に参加した時に天然痘の生ワクチンを投与を受けた。

 生ワクチンは一生モノのワクチンであり、俺の血から天然痘のワクチン血清を作れる。ただ俺一人の血から作れる血清の量は少ない。医療担当だった彼が言っていた覚悟とは、誰を救い、誰を見捨てるかと言うことだった。

 王と国運営に必要な人材を優先することにした。


 後は天然痘の膿や牛痘の膿とアルコール度数の高い酒を混ぜた不活性ワクチンを作って摂取させるしかない。


「つっ……」


 自分の血液を採血し、遠心分離機で血清を作る。クーラーボックスに氷と塩で冷却し血清を低温保存する。

 生理食塩水と医療器具のアツベを持ってウルの国へと繋がる扉に向かう。


「うっ……」


 血を抜いたことで目眩がするが踏みとどまって扉を潜る。


「チートの賢者よ、治療薬は見つかったのか?」


 扉をくぐり抜けると王太子が迎えてくるれる。俺は笑みを浮かべてクーラーボックスを叩いて示す。

 不活性化ワクチン酒の作り方を教える。蒸留装置が完成していて本当に良かった。

 血清ワクチンと食塩水を希釈してアツベに注入し、国王に直腸注入させる。


「あとは一週間様子見です。一週間後に水疱がなくなって膿が出なくなったら治療完了です」


 アルコール消毒の徹底、膿などを洗ったりした水は水場と関係ない場所に廃棄、もし死人が出た場合は死体袋に入れて火葬することを伝える。

 ウルの国は土葬らしく、火葬に理解を示さなかったが、病で死んだ死体が新たな病気の悪魔を生み出すと伝えるとなんとか理解してくれた。


 次の週、やはり隔離から漏れた人達から天然痘の発症が確認された。

 残りの血清を全部使って治療に当たったが、やはり子供や年寄り、体の弱った人から死者が出てしまった。

 翌週には王が快気しており、牛痘に感染した牛を発見。快気祝いの振る舞い酒と称して不活性ワクチン酒を飲ませる。

 竹を大量に竹炭にして竹酢液を採取し、竹酢液を薄めた白湯で手洗いとうがいを勧めていく。


 死者は出たものの、一ヶ月後には天然痘の感染者は発見されなくなり消滅と認識する。伝えた技術もある程度円熟していき、新規に開拓したノーフォーク農法の畑も完成した。


 天然痘の脅威を乗り越えてウルの国は発展していく。そんなある日、週末なのに扉が現れなくなった。

 次の週も扉は現れず、おそらくは俺の賢者としての役目も終わったのだろう。

 ウルの国の様子が気になるが独り立ちしたと思うことにした。


 どうかウルの国が末永く幸せに発展していることを願う。


 こうして俺の異世界での海外支援は終わった。

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週末は異世界で賢者やってます。 パクリ田盗作 @syuri8

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