週末は異世界で賢者やってます。
パクリ田盗作
第一話:週末は異世界で賢者やってます
異世界トリップという言葉を知っているだろうか?
昨今ライトノベルやネット小説でよく使われる題材で、大体2000年代の現代日本社会で暮らす主人公が様々な要因で文明文化種族や風習の異なる世界へと移動して暮らしたり冒険したりする物語を異世界トリップって言われている。
さて、なぜこんな話をいきなりしたかというと……俺もその手の異世界トリップに遭遇したからだ。しかも週末限定で。
きっかけは今のアパートに引越して初めての週末、自室で飲んで過ごしていたら見覚えのない扉が増えていたこと、ドアを開けると何故か中世ゴシック調建築の城に繋がっていた。そしてその城で現地の人達から俺は賢者として向かえられた。
なんでも俺が通ってきた扉は開かずの扉と言われていて、その扉が開くと賢者が現れて国を豊かにする知識を与えてくれるという言い伝えがあるとか。
実際に俺が出てきて、城の王様から国賓と迎え入れられ歓迎を受けた。
食堂と思われる場所で宴が開かれていたが、まだ暖炉もなく、燃料も薪だけだったので、木炭の作り方を教えたら大変喜ばれた。
翌朝城を出て実際に木炭の作り方の指導をする。城の兵士と国王であるレネゲス、王太子であるネレス、家令や国王に付き従う貴族を伴って森近くの開けた場所で制作を始める。
森の開けた場所まで行く途中城下町を見て回って思ったことは、このウルの国は古代~中世初期ぐらいの文明だ。木製の簡素な家、町の人々もほとんどが農民、井戸もロープの付いた桶を投げ込んで引っ張り上げる原始的な井戸だった。
城の兵士達は革鎧に青銅の剣、隊長クラスが兜に動物の毛皮を鞣したマント。馬も王族が載っているが鐙もまだないようだった。
まずは兵士達にお願いして枯れ木や倒木を集めてもらう。中心部に丸太を立てて、円錐に木材を積み立て周囲を土と灰で塗り固めて蒸し焼き状態にする。
火をつけるのも一苦労で100円ライターで火を付けたら賢者の魔法と大騒ぎされた。どうやらこの世界には魔法は存在しないか秘匿されてるっぽい。
出来上がった物を見せても反応はいまいち。まあ、初めて見る人からすれば黒く燃え尽きた薪にしかみえないからなあ。
木酢液も一緒に回収して城に戻り、厨房で実際に木炭を燃料にして火をつける。
炎が出ないことで疑問視する人もいたが、火元に近寄って熱が発生していることを確認すれば興奮していた。
そこからは心の中では俺が賢者であることを疑問視していた人も掌を変えて賞賛していた。
また木炭を使った濾過装置の作り方を教えると、早速王様が命令し、材料を取り揃える。
材料は至ってシンプル、底に穴を開けた桶の一番下に木炭、その上に綺麗に洗った砂と砂利を交互に敷き詰める。この時双方が混じり合わないように境界部分に布を挟み込む。最後に木桶に布の蓋をして上から水を流せば濾過されていく。
土などが混じって薄汚れていた水が透明になっていくのを見て見学していた人達が大興奮していた。
最後に木炭を製造する際に発生する木酢液の効能を伝えれば、王家秘伝の薬として取り扱われることになった。
元青年海外協力隊として活動していた経験と知識が役立ってよかった。
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