第三話 撥ね釣瓶と上総掘り
鉄を作った翌日は撥ね釣瓶の知識を教えた。
ウルの国の井戸はロープを結んだ桶を井戸に投げ込んで引っ張り上げる原始的な水くみ方法だ。
これにはかなりの労力が必要で時には桶の水の重さに負けて転落事故も発生している。
現地の人達は転落事故は仕方ないと受け入れているが、安全を確保できる改良があるなら改良するのが俺のモットーだ。
撥ね釣瓶自体は製造は簡単だ。テコの原理を利用した釣瓶で桶を下ろす時はてこの桶側に、持ち上げる時は重り側に体重をかければいいだけだ。
この撥ね釣瓶は二つデメリットがあるが、上総堀りができるようになればポンプを教えられる。
実際に木材と重し代わりの石で作れば大喜びだ。水汲み係の中学生ぐらいの女の子ですら簡単に水が汲める。
次に井戸の掘り方として上総掘りを教える。これは今現代でも現役で使える井戸掘り技術だ。
この技術が発明されるまで井戸掘りは死と隣り合わせの作業だった。江戸時代の日本では人が中にはいって地面を掘るもので生き埋め事故が多発、地下水脈の数位が高い場所でないと仕えない方法でもあった。上総掘りなら1日4m掘れて、最大500mまで掘ることができる。
作業工程を伝え、大工と鍛冶師、城の兵達を借りて井戸掘りの作業場を作る。
初めての試みで作業は中々進まず、日没となったために作業は中断翌日に持ち越すことになった。
ウルの国の夜はとても暗い。日本のように街灯やネオンといった明かりはなく、日が落ちれば基本全員寝るだけだ。
この世界の季節は不明だが少し肌寒い。暖房器具は暖炉と毛皮の服やマントぐらいで兵士達は一つのベットに複数人入ってお互いの体温で暖を取っているようだった。
トイレ環境も最悪で催したら昼間は野外で済まして放置。夜はオマルにして翌朝窓から投げ捨てる。衛生環境も変えないといけない。
ポケットに入っていた手帳とスマホのライトで今後の予定を書き込んでいるとスマホに表示される時刻が日付が変わる0時になると、周囲の風景が城の部屋から自宅のアパートに入れ替わった。
「どうやら、日付が変わるとウルの国と繋がったり、途切れたりするのか……」
夢でないことを確認するためにポケットを漁れば、金貨が10枚あった。
原理は全く不明だが土曜日の0時から日曜日の24時まではウルの国に異世界トリップできるようだ。
なぜこのアパートなのか、前の住人はこの現象を知っていたのか、色々疑問があるが明日も仕事なので寝ることにした。
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