第十五話:天然痘の脅威!
翌日は視察。高炉はテスト稼働、水車小屋は実働に移っていた。
報告、連絡、相談の重要性を口酸っぱく伝えて、問題や質問は樹皮紙に書き込むように伝えた。とりあえず3ヶ月は技術訓練に費やすとしよう。
翌週の土曜日、ウルの国に来ると皇太子が出迎えてきた。国王はと聞くと病気になったという。賢者の知恵で治せないかと言われて、とりあえず国王にお見舞い。
「こっ……これは……天然痘じゃないかっ!?」
ベッドに横たわる国王の顔や手足には天然痘独特の水疱が出来ていた。
「すぐに隔離を! あと今日まで国王に触った者を全員集めろ! 感染を広げるな!!」
俺の怒鳴り声にウルの国の人々は目を白黒させるが、王太子は俺の様子からただごとでないとわかったのか、他の貴族や兵士、使用人たちに命令していく。城内は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。
天然痘の潜伏期間はおよそ12日前後。王以外に今現在は大本となったウィルスキャリアーの確認と感染の疑いのある人物の隔離を行う。
王以外にも似た症状が出てる人がいないかというと2週間前にやってきた旅の吟遊詩人も同じ症状だという。おそらくその吟遊詩人がキャリアーだ。
「まず、竹酢液を薄めたお湯で手洗いとうがいをしてください。症状が出ていない人たちはそれで天然痘を予防できます」
今はこの世界のチート能力に感謝する。成長速度が速められたおかげで大量の竹が手に入り竹酢液が採取できた。
「あとは……国王とその吟遊詩人をたすけないと……」
天然痘を治療するにはワクチンが必要だ。だがウルの国にはワクチンもなければそれを投与する注射もない。
「まてよ……たしか……」
青年協力隊元メンバーで医療を担当していた人から貰った資料に天然痘についての記述があったはず。
「牛痘があれば天然痘を治療できる……皆さん、今から言う特徴を持った牛を探してください。その牛が薬になります」
牛痘とは牛に感染する天然痘のような病気だ。その牛痘の膿が人間の天然痘のウィルスを不活性化させる。
だが、牛痘の発症率はかなり低く、100頭いて5頭いるかいないかの確率だ。
「一旦国に戻ります。他に手段がないか探してみます」
皇太子にそう告げると俺は扉をくぐって日本へと戻る。深夜にかかわらず医療担当だった元メンバーに電話をした。
とりあえず異世界ということは伏せて一人で後進国の田舎を旅している設定で、天然痘が発生したことを告げる。
何か対処方法がないか聞くと、俺の覚悟さえあればできる方法があった。
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