1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと)
主人公は元青年海外協力隊で週末だけ賢者。平日は何をしている人なのかとても気になる。もし平日に働いているとしたら、週末の異世界はスポーツ感覚なのだろうか? それとも自分の魔法で疲れを回復したりするのだろうか? いろいろと想像力を掻き立てられる設定だなと感じた。さて真実は?!
2 物語は(どのように始まっていくのか?)
最近の異世界ワープ事情についてから始まっていく。主人公は現在のアパートへ引っ越したことをきっかけに、週末だけ異世界へ行けることになった。その国では賢者と呼ばれるようになるのだが、それはファンタジーなどでよくイメージされる魔法や回復などをする賢者ではなく、本来の意味の賢者だったのだ。まだ科学が進歩していない場所で、彼は自身の経験を元に彼らに文明を授けていく。現代人の自分たちも彼らと一緒に学べる物語である。
3 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。
・青年海外協力隊が後進国でどんなことをしているのか、勉強になる。
・文明の進んでいない国で、人はどのように信頼を得ていくのかわかりやすい。
・見たことのないもの、知らないもの、新しいものを信用するのは、自分たちがそういう国で生まれ育ったからだということに気づく。
・先のことを考えられる、想像できるのは教育に賜物なのだということに気づく。以前アメリカで”電子レンジでネコを乾かした”や”米を洗剤で洗う人がいる”という話を聞いて、頭は大丈夫なのだろうか? と感じたことがあるが常識とは経験や教育によるものなのだなと思った。
・単に思い付きで教えていくのではなく、彼の環境を見ながら優先順位が決まっていくような流れが良いなと思った。実際にベットを使って感じたことなど。
・ホームセンター好きにはわかる、ホームセンターの便利さと素晴らしさ。
・国家機密がてんこ盛り。
・チートの能力を持っていたものが意外。
4 作品の感想
まるで体験記。いや、主人公の体験記なのだろう。
初めはある一つの知識を授けるところから始まり、国が少しづつ変化を遂げていく。知識を授けるにしても、ただ便利なだけでは人の興味を惹くのは難しいのだなと感じた。体験して”必要”かどうか知ること、それが人の心を動かしていく。ただ便利になっていくだけではなく、段階が必要というのも勉強になった。そして、日本がどれだけ恵まれた国であるのかということも。
人を助けるには、まず自分が助けるだけの力や知識が必要となる。主人公は彼らに何が必要で、何を教えてあげるべきなのかを吟味している。それは経験によるものでもある。自分たちの生活がどれほど便利なのかを改めて考えさせられる物語だなと感じた。
5 物語のその先を想像して
これからがあの国にとってのスタートなのだと思う。自分たちの力で発展していくのか、それとも衰退していくのか。賢者から得た知識を得て、これから皆で頑張っていくのだろうと想像する。
あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか? おススメです。
平凡な自分でも異世界転生すれば英雄になれる!
そう思っているそこのあなた、異世界はそんなに甘くないぞ。
運よく女神様がチート能力をくれたらいいけど、そんなボーナスもなく、さらには異世界でも使える技術や知識もなければ、せっかく転生しても待っているのはやはり平凡な人生なのだ。
そこで、転生した異世界で無双したいあなたにオススメなのが青年海外協力隊。
ここで学べる知識、技術はホンモノだ。十分に異世界でも通用し、たちまち賢者様と褒め称えられること間違いなしと今作が証明してくれている。
すごいぞ、青年海外協力隊!
最高だぜ、青年海外協力隊!
異世界で知識チートするには青年海外協力隊でキマリだ!
まぁ、僕は大変そうなので女神様がチート能力をくれる方に賭けますけどね(ぇ
雑誌「Newton」で、異世界についての考察を読んだ事があります。
宇宙の、光のスピードで進んでも届かないほどに遠い領域は、観測が不可能なのだから、そこに「違う世界」が存在していてもおかしくない、という主旨の考察でした。
では、現世において、船や飛行機等の移動手段が発達していなかった頃の人間から見ると、海外は「異世界」なのでは? と思っていました。
そんな折、この作品ですよ……。
うん。青年海外協力隊の知識が、異世界に通用するのは、物の道理にあっていると思えます。
知識と知恵による「異世界への技術供与」、いろんな事を知れてとても面白いです。
ここに書かれたのは、まさに開拓日誌である。
多分、作者の知識がふんだんに活かされた内容なのだろう。
本来の意味とは違うが、知識チート部分が非常に説得力があり、他の小説ではわからないような問題点までもきちんと書かれていて、非常に強い説得力を持つ。
これぞまさに、知識チートである。
ただ、そこには確かに一つの物語があり、一つの歴史があるものの、私のようにドラマチックなものを求める者にはいささか消化不良もあるだろう。
そのために★は1つ減らしたが、それとは別にしてこれは一読の価値がある話だと思う。読めば、目からうろこがいくつも取れるに違いない。
読むときには、ぜひエッセイのように、またはあるひとつの開拓記録を学ぶつもりで読んでほしい作品である。そうすれば、深い感銘を受ける作品ではないだろうか。