第22話 終
誰が悪い、とは言わない。
正しいのは所詮自分だけなのだから。他が悪いと言って断罪することなどいくらでも可能だ。
それでも理解することはできる。
なぜこうなったのか、どうしてこういうことが起きたのか。
その根っこをたどり、そしてその誰のせいでもない原因に振り回されたその人を許すこともできる。
今回だってそうだ。
社会正義が彼女を断罪することもできただろう。
私が彼女を悪魔だと、叫ぶことはより簡単だろう。
「所長、報告書出来上がりましたッ」
「……タイトルは何がいいかね」
「いやいや報告書でいいと思いますよ」
だけど、理解し、共有し、そして相手を認め、相手を赦す。この一連の行為のなんと難解なことだろうか。
だけど、それこそが人の本来の在り方だと思う。
私はその道をあきらめない。
誰かが誰かを悪いと叫んでも、私は決して悪を叫ばない。
苦しくても、どれだけ不幸でも、理解しようとするその難解な道こそが、本来の人のあるべき姿なのだと思うから。
「……未実現事件調査報告書」
「……なんですそれ」
「タイトル」
「はぁ」
「つけたまえ」
「センスない」
「いいじゃないか。私らしくて」
これは事件にすらならない、小さな出来事。
だけどソレは、最期まで助けを求め続けた少女に、少しだけ手を伸ばせたのだと思う。
ありがとう。
私も、貴方を知ることができて、本当によかった。
またいつか『彼女』に出会えると信じ、この物語の終わりとしよう。
未実現事件調査記録報告書 終
未実現事件調査記録書 @hand-to-hand
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