第7話
同日、ダイスケからメールで連絡があった。
志野原歩美の実家の場所だった。後、ついでに家族がいるかもしれないと、戸籍に乗っている家族構成もメールに記載されていた。
彼女は、母子家庭だった。
十二年前に母親が離婚して以来、ずっと母親と弟との3人暮らしだったらしい。
そして、一年前に住民票をこちらに移したとのことだ。おそらく20歳という年齢から考えて通う大学がこちらにあるからなのだろうか。
私はというと、新幹線のチケットを取って、長旅を始めるところであった。
場所は静岡県の富士宮市。凡そ富士山の膝元にある町である。パソコン等を駆使して場所をあらかじめ確認したが、何の変哲もない住宅の中に彼女の実家があるらしい。
次なる目的地もわかったところで、ホテルで荷物をまとめているところ、カオル君はふと、不思議そうに首をかしげていた。
「向こうに行って何か、わかりますかね?」
何の変哲もない、本当閑静な住宅街の中にあることを、彼は少し残念がっていたようだ。
「でも、徒労に終わるかもしれない」
「それなら次を探せばいい」
「でもッ」
「カオル君は、何が見つかれば、満足するかね?」
「……。志野原歩美を殺した犯人」
「カオル君、君はこんなしがない何でも屋のところにいるよりかは、警察官を目指したほうがいいよ。
社会が所望する真実はそこにいけば、嫌というほどに転がっているだろうしね」
「所長は、何を求めているんですか?」
「クライアントが求めているもの」
―――――彼女は『わからない』といった。
そう、だから真実がほしいのだ。
彼女にとっての真実―――――『彼女』が何者であるか。彼女が何からできていたのか。彼女がどのような人生を送ってきたのか。
そして、どのように死んでいったのか。
答えを知りたいのではない。答えはもう、あのアパートの一室で冷たい遺体となって明らかになっているではないか。
知りたいのは、彼女の『起源』
「起源?」
「ああ。それを知るために、彼女が生まれた場所を見てくる。何を見て、何を知り、何を感じて生きてきたかを知る。
きっとそれが、クライアントの望む回答だよ」
志野原歩美が、いかにして出来上がったかという過程、それを知ることが今回の依頼だろう。
そして其れは―――――泥の底を覗くことに等しいだろう。
『彼女』が殺したもの、それはおそらく―――――
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