トール・テールが苦手だから「フォレスト・ガンプ」がNGで、自分自身もNG……だと!?
アメリカの民話の中で、「ほら話」という日本語訳がつけられるのが「トール・テール」である。
その発生理由や歴史的意義についてはさまざまな研究がおこなわれているようだが、私はとにかくトール・テールが苦手である。
「ほら」の規模がどんどん拡大していくさまは、まるで子供が自分の力を誇示するために嘘を重ねていく姿のように見えるのだ。
「縄跳びの一重跳び、50回できたよ」
「なんだよ、おれなんか1000回できるもんね」
「ぼくだって、本気出せば100億万回できるよ」
と、まあ、こんな感じで、何の根拠もなくほらを吹きまくるのが、どうにも生理的に受け付けないのだ。
かつては自分も、友達にいいところを見せたいがために、誇張した嘘を吹きまくったことがあった。それを思い出して、穴があったら入りたいような、こっぱずかしくて死んでしまいたくなるような、そんな落ち着かない気分になるのである。
トール・テール的要素が顕著な物語で、もっとも有名な映画が「フォレスト・ガンプ」であると私は思っている。
この映画が公開された当初、世間ではいわばトム・ハンクス・バブルが発生していて、彼が出演する映画は何でも注目を集めるような状況だった。そのバブルに流されて、たいした予備知識もなく劇場へ観に行った私だったが、ストーリーがトール・テールであることに気づくやいなや耐えられなくなった。
かなりの数の映画を劇場で観てきたが、耐えられなくなって上映途中で劇場を抜け出したのは、この「フォレスト・ガンプ」のみである。
それほどまでに、私はほら話が苦手である。
と書いてみて、ふと気づいた。
ここで書いていることも、ほら話ではないか。
自家撞着。
いや、違うのだ。
たしかに私はほら話を書いている。フィクション作家なのだから、ほらを吹いてなんぼじゃないか。でも、トール・テールとは違う。
断じて。
ぜぇぇぇったい!
無責任にほらを吹きまくるトール・テールとは一線を画している。
私が書くほら話は、トール・テールなどと比べたら、50倍、いや1000倍、いや100億万倍もまっとうではないか。
……自家撞着。
まいったね、こりゃw
嗚呼、素晴らしき哉。
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