多様性社会が崩壊した人類を襲う、あの白黒のキュートなやつ
私は基本的に邪悪な人間である。
生物の特定の種が絶滅の危機に瀕しているから保護しなければ、なんて話を聞くと、鼻で笑ってしまうのだ。
地球の長い歴史の中で、どれほどの生物種が絶滅してきたか。今でも、人類に発見もされないままひそかに滅んでいく種がどれだけ存在しているか。
巨視的に見れば種は滅ぶのが当たり前であり、いちいち取り上げてなどいられない。生物種の保護を訴えるなど、自分が気に入っている生物に絶滅してほしくないというだけの、ただのエゴである。イヌネコは絶滅してほしくないが、ゴキブリは絶滅してほしい。そんな程度のことなのだ。
というわけで、私は絶滅前提でものを考えている。
残念ながら、我々が属する「ホモ・サピエンス」という生物種も、いつか必ず絶滅するだろう。
フィクションの書き手としては、種としての人類がどのような最期を迎えるのか、とても妄想が膨らむところだ。
環境の激変によって、数十年程度で一気に全滅してしまうこともありうる。
病気の蔓延によって、種としての存続を維持できないほど数が減ることもあるだろう。
生殖力が衰えて、次世代が生まれなくなってしまうことも考えられる。
宇宙人が攻撃をしかけてくる? いや、AIが人類に反旗をひるがえす? 人類同士が殺し合いをする?
こうして考えると、実際に絶滅まではいかないものの、絶滅のシナリオは、そのほとんどのパターンがフィクション作品に出てきてしまっている。
いまだかつてない絶滅シナリオを考えるためには、もっと妄想力を磨かねばなるまい。
さて。
昨年、どこぞの施設で障害者を殺しまくった事件が話題になった。
実はその少し前に、私はネットの質問サイトでこんな話を目にしていた。
「どうして弱者を抹殺してはいけないのでしょうか?」
この問いに対する「ベストアンサー」は、次のように要約できたと私は記憶している。
・単純に生物として考えると、1対1で人間よりも強い生物はいくらでもいる
・人類の強さの源は、集団での力である
→たとえば、知恵のある者が武器を考え、手先の器用な者が武器を作り、力の強い者が外敵を退ける、といった役割分担により、種全体としての強さを手に入れている
・特定の場面で弱者であっても、別の場面では種の存続に役立つ可能性がある
・なので、一見したところ弱者に見える者でも、社会の中で支援して多様性を確保しておくのが人類の生存戦略である
なるほど。
言われてみれば、その通りである。
しかしながら、多様性を確保するために構築した社会の中で、反社会的な人間までもを保護し、支援するのはいかがなものかと思わずにはいられない。
何かの形で歯止めをかけなければ、それこそ社会が崩壊しかねない。
おおぉぉっ。
新たな絶滅シナリオができたではないか。
反社会的な人が増える→社会の崩壊→集団としての力の減退→人類絶滅
このネタ、書こうかな? 書けるかな? どうだろう?
直感としては、もうすこし要素が欲しい感じだ。
そうだ。
人類を絶滅に追い込む、種としての力が強い生物が何なのか。
そこがポイントとなる。
ここで宇宙人とかフライング・シャークとかを出すのは、いまいちだ。
やはり既存の生き物がいい。
ヒグマ?
地上最強の部類に入る生き物だが、ちょっとベタか。
サル?
知性の高さという意味では有望な候補だが、それでは「猿の惑星」になってしまう。
もうすこし意外な生き物がいい。かわいくて、人類の地位をおびやかすとは思えない生き物が……。
パンダ?
パンダが飼育員にじゃれつている映像をネットで見てみる。
それが、実はじゃれているのではなく、飼育員を襲っている姿なのだと妄想してみる。
うん、それでもかわいいw
嗚呼、素晴らしき哉。
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