人工知能に仕事を奪われるとか心配してるヤツ出てこいや

ゴールドマン・サックスのトレーダーが、自動取引プログラムによって激減しているという。かわりに、取引プログラムをメンテナンスするエンジニアが増えているのだとか。

このように新たな技術の出現によって旧来の仕事がなくなることは、人類の文明史上では頻繁に起こってきたことなので、いまさら騒ぎ立てるような話ではない。市民を都合のいい方向に誘導するために不安をあることもまた、昔からおこなわれてきた支配者の常套手段である。


仕事がなくなる=収入がなくなる=生きていけない


この不安感は強烈だろう。だが、支配者たちの扇動にだまされてはいけない。

そもそも今の自分の仕事が未来においても確実に存在し続けると思うほうが間違っているのだ。

受注先の破綻によって、その企業に就職した理由であったエンタメ系の仕事がなくなってしまった。転職した会社が破綻した。さらに転職した会社は超ブラックだったので耐えられなくなって辞めた。今は6ヶ月更新の業務委託契約なのでいつ契約を打ち切られるかわからない非正規雇用者だ。

以上は私の経験であるが、似たような経験をしている人は少なくないだろう。

そう、変化に満ちたこの世界において、永続性を信じることこそが愚者の証なのだ。


しかし、こと仕事という意味では、人類の歴史上ほぼ変わらずに存在しているものが3つある。


金貸し

賭博

売春


さすがこれらはなくならないだろう……と思わないではない。とくに賭博も売春も人間の本能的なものに結びついているものなので、そうそう変わるとは思えないのだ。

しかし、金貸しはどうだろうか?

金貸しは、通貨というシステムによって成り立っている。通貨が発明される前には存在しなかったはずである。

となれば、通貨がその役割を終えて存在しなくなった世界も、当然あり得るのではないか。



妄想してみよう。


人工知能技術が進歩すると、人間がやるべき仕事がなくなる。最終的には、人工知能自身が人工知能のプログラムを開発する、という時代が来るはずだ。

しかし、これは暗く不安な未来ではない。

人類がその叡智によって生み出した技術力で、労働という作業から解放された明るい未来なのである。

用事はすべてを人工知能搭載の機械が片付けてくれる。その機械のメンテナンスも、すべて機械自身がやってくれる。人間の生活に必要な食料を作ったり資源を採掘したり、機械を作ったり動かしたり……すべては機械化されて、人間は機械によって生み出される成果物を享受するだけで生活が成り立つようになっていた。


当初、これらの機械を持つ限られた所有者たちが、その成果物を機械を持たない者たちに販売することで利益を独占していた。しかし、機械を持たず、機械に仕事を奪われて購入にあてる財産を持たない貧困層が急増。この利益独占のシステムは破綻してしまう。

この破綻に直面していたある時、富裕層の一人が気付いた。

機械によって生産された富は、貧困層の全員に分配できるだけの量がある。もともと、機械がすべてを自動的にやってくれているので、コストも限りなくゼロだ。それならば、無償で全員に提供して、何が悪い?

こうして、社会の全員が自動化された機械の恩恵を受けて幸福に暮らす時代が訪れた。

通貨は必要なくなった。すべてが無償で提供されるので、なにかを購入するという概念がなくなってしまったのである。当然、金融業もその役割を終え、消えていった。


だが、話はこれでは終わらない。

完全に労働から解放された人々は、それによって生じた時間を何に使うようになるのだろう?

娯楽に興じて一生を遊んで過ごすだろうか。

いや。ただ遊んで暮らすだけでは、人間が根源的に持つ自己顕示欲や自己承認願望が満足させられることはない。遊んで暮らす者たちは、次第に不安を感じるようになる。これが、エデン・シンドロームと呼ばれる心の病である。


エデン・シンドロームが蔓延し、無意味な暴力事件が多発する社会。

そこで、人々は気づくのだ。やはり人間は生産的なことをしていなければならない。自動化された機械にはできない、なにか創造的なことを。

そこで、人々は科学や新技術の研究に多くの時間をさくようになる。

新たな次々とブレイクスルーが生まれて、人類の進歩の速度は加速していくだろう。

もちろん、人々の意識が向かう先は未知のフロンティア、星々の世界である。



あー。

明日からそんな世界になってくれないかな。

とりあえず、エデン・シンドロームになるまで寝て暮らしたいw


嗚呼、素晴らしき哉。

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