イヤっ、声が出ちゃうっ! のヒミツはベジータにあり

思わず声が出てしまうことは、誰にでもあるだろう。

しかしながら、基本的にそれは恥ずかしいことで、普段は声出しを控えるように自制心が働いているものである。


たとえば、快感のあまり「はぁんっ」と声が出てしまう場合は、自制心を失うほど強い快感にさらされているか、自制心を失ってもいいほど親密な相手と一緒にいるか、そのどちらかだろう。

仮に、満員電車でうっかり背中の性感帯に触れられてしまっても、体がびくんとするだけで声までは出ない。それはひとえに自制心のたまものである。


歳をとると、自制心がなくなるというのが通説である。もっともよく引き合いに出されるのは、ダジャレだろう。

ダジャレを思いついたとき、通常はその場の状況や、そこにいる人たちの嗜好などを考えて、そのダジャレを実際に口に出すべきかどうかを判断する。いわば、自制して空気を読んでいるのだ。

ところが、ある程度の年齢になると、この自制が効かなくなる傾向にあるのだ。思いついたら反射的に口に出してしまう。その結果として場がシラけようと、知ったことではなくなるのだ。


ダジャレならば、まだいい。


今朝、駅で一人の老人を見た。老人は、なにやら説教口調で、周囲に向かって声を張り上げていた。むろん、真面目に取り合うと面倒なことになりそうなので、周囲では全員がその老人を無視して通過していく。

すると、相手にされない老人はさらにボルテージが上がる。どうやら今の政治に不満があるようだが、話が支離滅裂でどうにも理解できない。


言葉を発するという行為は、高度に洗練された自制を求められる。

その言葉の受け取り手に理解されるために、表現は常に調整しなければならない。対話をしているのであれば、相手の発言を聞かなければならない。自制を失ってただ言葉を垂れ流すだけでは、それはもはや公害でしかない。


あ、この文章は、ちゃんと自制して書いてますよ。公害文章じゃないです。え? 適当に書いてるように見えるって? それは気のせいですよ。たぶんw


話がそれた。

そんなわけで、その公害老人のがなり声を聞きながら、私はふと気づいた。

自制する力だけでなく、発散しようとする力も存在しているのではないか、と。我々モノ書きも、いわば発散したい欲求に自制をかぶせて、人の目に触れても恥ずかしくないものを作ろうとしているわけだ。

既存の言葉だと「自己顕示欲」あたりが、この発散したい欲求をもっともうまく表現しているのではないだろうか。

しかし、微妙にニュアンスがずれる。「欲」ではないのだ。もっと原始的な「力」のようなものが働いて、我々に自制を失わせようとしている。


今回は、この力に名前をつけようと思う。

もっとも力に固執している自制心の弱い有名キャラといえば、ベジータをおいて他にはあるまい。

なので、この力を「ベジータ力」と呼ぶことにする。

となると、ベジータを抑制する力は、「ブルマ力」とせざるをえまいw


我々にはベジータ力とブルマ力がある。

ベジータ力は原始的な力である。これに対して、ブルマ力は人類が進化の過程で身につけた新しい力で、大脳新皮質から生み出される。

年齢を重ねたり、飲酒をしたりして大脳新皮質の活動が衰えると、ブルマ力が低下して、抑制されていたベジータ力が表に出てくる。これが、前述した公害老人の頭の中で起こっていたことだろう。

思わずダジャレを口走ってしまうのも、ブルマ力の衰えが原因である。


冒頭の例でいえば、快感のあまり声が出てしまうのは、ブルマがデレてしまい、ベジータのオラオラ感が増している、ということになるだろう。

ベジータおそるべし。


さて。

好きな相手を前にしてブルマ力を意図的に低下させるのは、なかなかに良いことである。きっと二人でハッピーな時間を過ごせるはずだ。

しかし、双方の合意がないのにブルマ力を低下させてベジータ力が勝ってしまうと、それはもう犯罪である。このバランスが難しい。

犯罪にならないように、みなさんもベジータにご注意を。


みなさんのブルマ力は、お元気ですか?

私のブルマ力は、最近衰えが著しく危険信号ですよ。

ブルマさんに若返ってもらわないとw



嗚呼、素晴らしき哉。

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