華麗な加齢のカレーが過冷却

大寒波が来たとかで、世間は大騒ぎである。私が住んでいる場所でも、久しぶりに朝の気温が氷点下となった。

ベランダの植物用に汲み置きしてあるバケツの水も凍っている……かと思いきや、まったく凍っていなかった。

なんだ、面白くない。

そう思いながらも、念のため本当に凍っていないか確かめるために、バケツを揺すってみた。


その刹那。

水の表面が一瞬のうちに凍りはじめたではないか。


をををっ!

これが、過冷却というやつか。


静かな状態で温度が下がると、水は0度以下になっても凍らずに液体のままになっている。そこに衝撃が加わると、一気に凍る。この現象が、過冷却である。

知識としては知っていたし、動画などでも見たことはあったが、実際にこの目で見たのは初めてだ。もっと実験室的な場所で環境を整えないと発生しないものだと思っていた。


過冷却からの凍結の様子は、まるでフィクションであった。

あたかもアナ雪のエルサが使う魔法のよう。

もしくは、ターミネーター2でT-1000が液体窒素をかぶって凍結していくよう。


VFXなしでリアルに見られるなんて、まさに眼福であった。



しかしながら、ちょっといちゃもんをつけたい。

過冷却という言葉、漢字で見ればわかりやすいが、「かれいきゃく」と声に出してみるといささかわかりにくい。


華麗脚?

加齢却?

カレー客?


どれだかさっぱりわからぬではないか。


華麗脚は、美脚の女王的な何かだろうか。スペイン産ハモン・セラーノなども、塊で見ると見るからに美味そうな脚だ。美脚の女王の脚をかじる? さすがにその妄想は行き過ぎだが、美しいマーメイドラインをはふはふするのは悪くない。


加齢却だと、姥捨山的なアレか。年をとった人間を邪魔扱いして、捨てるのだ。ひどい話である。とはいえ、認知症で手に負えなくなった年寄りを施設に放り込むのも、姥捨とあまり変わらない気がする。


カレー客は、あれだ。「カレーは飲み物」とかいうやからだ。私もカレーライスは嫌いじゃないが、飲み物とは言えない。どう見ても固形物が入っている。噛んで食わないと腹をこわすではないか。



以上を総合すると、以下のようなストーリーとなる。


美脚の女王と、捨てられた年寄りと、カレー好きなぽっちゃりさん。

このでこぼこトリオが、世界を一瞬で凍りつかせる恐怖の魔法に対抗する。世界の未来は、この3人に託された!


華麗「このわたくしの美脚を見て体の一部がホットになれば氷なんて怖くないわ」

カレー「熱々のカレーをかければ氷は溶けるかもしれないけど、もったいないからボクが飲むね。ぐふふ」

加齢「朝ごはんはまだかのう」

カレー「おばあちゃん、さっきカレーを飲んだじゃん」

華麗「あの、わたくしの美脚に注目してくださらないかしら?」

加齢「はて、あんたはどちらさんかな?」

カレー「カレーおかわり!」

華麗「だから、わたくしの美脚……」


こうして、世界は氷に閉ざされるのであった。


うん。

世界は、未来を託す相手を間違ったw



嗚呼、素晴らしき哉。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る