(ちょっと真面目に)トランプ大統領とマクフライ反射
アメリカ合衆国のトランプ大統領が就任演説をおこなった。
その内容で、「Defend」とか「Protect」という言葉が何度か登場していた。防御する、守る、という意味のこの言葉たちは、これまでのトランプ氏の言動と重ね合わせてみると、彼の行動原理の一端が見えてくる。
少し前に、彼が女優メリル・ストリープから非難された後、彼は反論をおこなっている。記者会見では、それまで彼を攻撃してきたメディアに対して質問すらさせなかった態度は、見ているこちらが恥ずかしくなるほど子供じみていた。
この面での彼の行動原理は明確だ。
心的な意味での「防御反射」である。
さて、私は作家なので、小説において防衛反射が過剰な人物を描くことを想像してみた。
表面上に見えている防御反射、強気でやや過剰な攻撃的姿勢の陰には、そうなってしまう理由というものが存在しているはずだ。
それは、何か。
「不安」であろう。
強気に見える人のほとんどは、内心に抱える自身の弱さへの不安を隠すために、意図的に強気な言動をとっているのだ。周囲からすると、その強気さは過剰に見えるときもある。しかし、そうした行動が繰り返されるうちに、本人にとってはいたって当たり前の無意識的な行動になる。
これが防御反射の原理だ。
私はこれを「マクフライ反射」と名付けたい。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公、マーティ・マクフライにちなんでいる。彼は基本的にヘタレな弱虫だが、面と向かって「腰抜け」と言われると無茶を承知で相手と張り合おうとする。典型的な心的防御反射である。
マクフライ反射は、誰にでもある。多くの場合は「強がり」とか「空元気」とか、もっと穏やかに「平静を装う」といった形で表現される。ごく自然なものだ。しかし、これが過剰になるのは、いささか病的である。
過剰なマクフライ反射をする生き物を、我々は身近によく知っているはずだ。
犬である。
昔から「弱い犬ほどよく吠える」と言うではないか。
ボス犬はほとんど吠えず、周囲ににらみをきかせているだけ。たまに、ここぞというときに吠える。そんな風格など微塵もない、いつもぷるぷる震えながらきゃんきゃん吠えまくる小型犬の姿が、私は新しいアメリカ大統領の姿にどうしても重なってしまうのだ。
さて。
話はトランプ氏個人にとどまるものではない。
彼がブチ上げた政策の多くは、国という単位でのマクフライ反射である。
その政策が一定の支持を集めたということは、アメリカ人が自国に対して抱えている不安が大きいということであり、その不安を過剰なマクフライ反射で処理しようという姿勢は「弱い犬」そのものである。
就任演説でどのような美辞麗句を並べようとも、この現実は変わらない。
弱い犬と化したアメリカが、ボス犬としての威厳を取り戻す日は来るだろうか? 私は、それはないと考える。
数年後、仮に弱い犬政策がうまくいき、アメリカは利益をため込んだとしよう。しかし、それで生まれるのは肥え太った弱い犬であり、ボス犬ではない。しかも、肥え太ったという成功体験を根拠にして、弱い犬政策が加速していくはずだ。
かくして、自国の(おもに経済面での)利益を守ることにきゃんきゃんうるさい国家ができあがる。
しかし、それもこれも、民主主義の正当な手続きによってアメリカ国民が選んだことである。周囲は自分たちの国に飛び火しないように、当事国民はよりひどいことにならないように、祈りながら受け入れるしかない。
私がもっとも危惧するのは、この流れが全世界に広がっていくことである。
ただでさえ、SNSなどで吠えてより多く拡散された者勝ち、という風潮が顕著な昨今である。声の大きい者が得をして、発信が下手な内向的な人間が損をする、そんな社会にはなっていってほしくないものである。
そうならないように、私にできることは何か。
わおーん。
微力ではあるが、私もここで吠えてみたw
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