第10話 少女の探し物

紗倉とレゲインは学校に忍び込み、屋上で少女を待っていた。

学校裏の塀を乗り越えるなど、レゲインが手助けをすれば簡単なものだった。

「細そうだから力無さそうなのに」

「俺も一人簡単に持ち上げれて驚いた」

「お、重たかったって言いたいの?」

「二十キロの子供が軽い?」

その返しに紗倉は反論ができなくなる。

幽霊少女が中々来ないのでレゲインは屋上を歩き回り探索していた。

「春歌、これ何?」

物陰から何かを見つけたレゲインは煙草の入れ物を拾って紗倉に聞いた。

「さぁ? 先生の忘れ物じゃない?」

レゲインは紗倉の後ろに幽霊少女を捉えると煙草を元の場所に戻し立ち上がった。

「少し遅くなったの」

背後からの声を聞き驚いて飛び跳ねる紗倉をはおってレゲインが前に出る。

「何でこんな所を集合場所にした?」

「安全な場所から入るの」

「入る?」

少女は階段の扉を開け壁にかかった鏡を指差すと紗倉とレゲインは顔をひきつらせた。

「……マジで?」

「まだあの妖怪的なのいたら死ぬよね?」

「屋上から下に降りれるの。非常階段があるから校舎を通らなくていいの」

レゲインは鏡をじっと見る少女に向こう側の安全を確認するよう促した。

少女が鏡の中から来るように合図をするとレゲインは物怖じする様子もなく中へ入っていった。紗倉もそれに続き恐る恐る中へはいる。

「ここは狭間っていうの。常に逢魔時みたいな感じなの時々丑三つ時になるの」

「逢魔時?」

レゲインの疑問に紗倉が鏡から出てきた答える。

「夕暮れ時だよ」

屋上の非常階段を降り、校門へ向かって足を進める。幸いな事に校庭には影の姿がなかった。

ふとレゲインが振り向きざまに言う。

「忘れてたけど思い出したことがあるんだ」

「え? なんで家で言わないの」

「忘れてたんだ。黒い服着た女の人に追っかけられた事を……っ!」

紗倉の後ろの生徒玄関を見て青ざめる。

「どうしたの?」

それに答える前に校舎の方から地面が割れるような大きな音が響く。

紗倉が振り向く前にレゲインが飛びかかり紗倉を突き飛ばした。地面に投げ出された紗倉が彼の方へ目をやると、抑えられた腕から地面にポタポタと赤い雫が滴り落ちている。

「レ…ゲイン……」

「危ないの! 走って逃げるの!!」

少女が叫ぶ。

「な、にしてる。早く逃げろ!春歌っ」

紗倉が立ち上がり走り出そうとすると、レゲインの背後に立っていた幸夜の腕を取った怪物がレゲイン目掛けて刀を振り下ろした。

彼は咄嗟に地面を転がり、体制を立て直すと脚を地面につけ紗倉を追ってそれから逃げ出した。

直ぐに追い付いたレゲインは彼女の手を引き校門から外へ出る。

「レゲインその腕……」

「軽く切っただけだ」

道の先で少女が手を振っている。

「こっち、こっちなの! 安全なの!」

呼ぶ方へ駆け込むと見えない壁それはぶつかる。それが壁に何度も体当たりをするたびに壁が振動して大きな音が響いた。

二人は息を整えなが入ることのできないそれの様子を見てほっと肩の力を抜く。

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