第9話 異世界の手掛かり?

レゲインがシャワーを終えリビングへ行くと紗倉が食事を用意してくれていた。

「九時まで時間あるし食べた方がいいかな? って。どうしたの?」

「お前の名前知らなかったなって思って」

レゲインは前髪を弄りながら気まずそうに目を逸らしている。その様子に紗倉はクスリと笑った。

佐倉さくら 紗倉さくらだよ」

それを聞にき少し考え込んだレゲインは顔を上げた。

「春歌」

「あだ名!?」

「ダメ……?」

名前でも苗字でも大差の無かった紗倉はその呼び方を許可した。

静かな広い家の中で二人で机を囲む。

ふと紗倉が聞いた。

「何か思い出せた……?」

「……何も」

紗倉はむっとした様子で目を逸らす。すると今度は淡々と食事を摂っていたレゲインが口を開いた。

「……春歌。親とかはいないの?」

「え〜なに? 聞いてどうするの?」

紗倉は揶揄うような笑みを浮かべる。

「気になったから。静かだし。聞いちゃダメだったなら答えなくていいけど」

「……はぁ。親は二人とも留守だよ。帰ってくる事殆ど無いし。お兄ちゃんは他の学校の寮」

「春歌兄貴いるの?」

「うん……まぁね」

紗倉は何年も会って居なかった兄の顔はうろ覚えだった。俯いているとレゲインの立ち上がる椅子の音が聞こえた。

「時間だ」

「え、まだ夕飯食べ終えてーー」

彼の皿の上の食事は綺麗に食べ尽くされていた。

「ま、待って。私も行くから!」

上着を掴み慌ててレゲインを追った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る