第25話 部活動
「佐倉さん、部活辞めるんですか?」
佐々倉がふと聞くと気になっていたレゲインと多幡も紗倉の方を向く。
「辞めないよ」
それを聞くと多幡と佐々倉は部員が減らなかった事に、レゲインは気不味い二人と一緒にならず済んだという事に安堵した。
「誰も触れないけどさ、何で春歌の……あ、兄さんがオグルとかの事知ってんの?」
レゲインは今まで狭間やオグルなどの事は普通の人には知られていないのだと雰囲気で察していたのだ。咲良が知っていたのも疑問だが、多幡がオグルを知っている理由も気になった。
「別に、オレらも知ってるんだから他に知ってる奴がいてもおかしくないだろ?」
それもそうだ。そこでレゲインは更に問い詰める。
「あんたは何処で知ったんだ?」
「佐々倉の家に招かれた時、書庫にそういう本があったんだ。ってか、何であんたなんだ!?」
「ん?」
「ん? じゃない。」
話が逸れた事もありそれ以上聞く事は無かったが、多幡が何かを隠していると少し疑った。
すると、多幡が突然立ち上がり両手を合わせる仕草をした。本当は手を叩きたかったのだろう。
「もうすぐ体育祭なんだ、レゲイン。リレーだ」
「は? 何で出場決定してるの? 絶対嫌だ」
「何でだよ〜頼むよ〜。オレも佐々倉もあんまり走れないんだよぅ」
縋り付く多幡を引き離そうとしながら出場させようとする趣旨を問うた。
「部活の宣伝にもなるだろ?」
「嫌だ! 大体、普通の奴がこんな部活入ったら死ぬ!」
「……それもそうだな。いや、危険も話した上で入部審査を加えよう」
その審査基準を後輩に投げるように三人を見た。
「体力でしょうか?」
それだと言う表情を多幡が浮かべるが、入部希望者に何をさせるかは決まっていない。
「体力だのの以前にさ、霊が見えないと意味ねぇじゃん? エベ達って誰でも使えるの?」
「何それ?」
「幽霊」
レゲインは多幡にエベと睦のことについて話した。
「倒す手段があったんだな。んで、その霊は?」
「知らね」
と言うのも、レゲインが自販機に立ち寄った時エベは突然走って何処かへ行ってしまったのだ。
「えっ!? それで、追いかけなかったの!?」
勿論、追いかけた。
「居なかったんだから仕方ねぇだろ。そのうち戻って来るよ」
「そのうちって……」
レゲインはエベが幽霊だからそうそう危ない目には合わないと思っていたが、紗倉は心配していた。
「睦の方は?」
「用がないなら出たくないそうで、家に置いて来ましたよ?」
「何も起きないといいね、美羅ちゃん……」
「睦は何もしませんよ!」
すると始業五分前の鐘が鳴った。四人は慌てて荷物を持ちそれぞれ教室へ向かった。
長い授業が終わり、レゲインと佐々倉が二人で帰り道を歩く。紗倉は先に帰り多幡は午後から病院へ行く用があった為、人数不足で部活は自由参加だ。
紗倉が先に帰ったのは、咲良から注意をするメールが入っていたからだ。
「春歌の兄さんってどんな人なの?」
「どうと言われましても」
佐々倉は咲良に会い遊んだ事もあったが、かなり昔の話だったために記憶は曖昧だった。
「優しい方ですかね? 妹大好きだった筈ですよ?」
「シスコン?」
「率直ですね」
紗倉が家に帰ると奥からエベが走って来て抱きついた。
「何で家に居るの?」
「エベは女の子を追っただけなの。なのに、怖かったの!」
「女の子? 何にしろ、あんまり離れるからそうなるんだよ。レゲインがエベをそこまで追うようには見えないでしょ?」
エベは頷く。
本人の知らない所で風評被害だ。実際そうだったから仕方ないが。
リビングの方から咲良が顔を覗かせる。
「紗倉、一緒に夕食でも作らない?」
「え? うん……いいよ」
久し振り過ぎる咲良の距離感に戸惑いながら家に上がり、エベに自分のそばに居るように言いつけた。
リビングへ行き、テレビを付けると咲良が追いたリモコンを取り、直ぐに電源を切った。
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