第26話 襲撃?
夜中、レゲインは睦に叩き起こされた。
「何だよ、って、何でここに?」
見た所、一人でレゲインの元まで来た様だった。
「美羅の所に居たんだけど、物音が気になって鏡を潜ったんだ。そしたら襲撃を受けて、此処まで何とか……」
「逃げられたなら、俺を起こす必要無いじゃん」
睦は俯いて首を振った。その様子を不思議に思ったレゲインは布団から出て、睦を連れ鏡のある脱衣所に入った。
「何があった?」
「その、レゲインの周りに居るシャドーマンの数が少なかったんだ」
「少ないって、居なかったとかじゃなくて?」
オグルと言っても、学校に出た時の様に完全に周りのシャドーマンが避け無い事もあるのだ。
レゲインが鏡を潜ろうとすると睦は止めた。もしオグルと遭遇しても、睦だけでは戦力にはならないからだ。
「覗くだけだよ」
そう言ってキーホルダーを鏡に付け、頭を覗かせる。するとすぐに驚いた様子で顔を引っ込めた。
「何かあった?」
「え? い、いや……なんか、女の子が」
「女の子? エベ?」
「浅紫色の髪してたから、違うーー!?」
すると、鏡の中から浅紫色の長い髪をした少女が飛び出しレゲインをすり抜け床に着地する。レゲインはぶつかると思い仰け反った為、そのままその場に座りこんでしまった。
少女は部屋を見渡し睦を見つけると、睦に大股で迫った。睦は思わず後ずさるが足を縺れさせ、尻餅をついた。
「な、何? ボクに何か用? それなら口で言って」
少女はしばらく睦の目を見つめると、睦の手を取り立ち上がらせ連れて行こうとした。
「や、やめて! 離して!」
それを見ていたレゲインは慌てて睦の腕を引き少女から引き離した。
離された衝撃で少女は転ぶが、直ぐに黙って立ち上がる。睦は怯えた様子でレゲインの足にしがみついていた。
「何すんだよ?」
「…………」
もう一度、睦の手を引いて行こうとする少女からレゲインは睦を庇う。
レゲインは少女に触れられないが、少女はレゲインを睦から離すことは出来なかった。
それに気がついた少女は少し動きを止めると元の鏡に手をかけた。
「もう直ぐ消えるからまた迎えに来るよ」
そう言い残し、帰っていった。
「睦?」
「あっ……ぅ……ぼ、ボクは大丈夫。ありがと」
「そう……首輪は無いけど、今夜は此処にいろよ。また来るかもだし」
睦は頷いた。
紗倉は朝早くに家を出ようとしていた。そこへ咲良が眠たそうに起きて来て靴を履こうと座り込んでいる紗倉にもたれかかった。
「何してるの?」
「もたれてる」
「それは分かるから。重いよ、どいて」
「もう学校に行くの? 部活? 一緒に行きたかったんだけどな……」
余りにも残念そうな言い方をするので紗倉が折れ、学校に間に合う時間まで家に居ることにした。
ジメジメとした中を傘を差さず出ようとした為、レゲインは睦に注意を受けた。
「なんか、忘れてた」
「ボクは濡れないんだけど、実態がある人は濡れるんだよ」
黒い傘を差し、雨の中を学校へ向かう。
「……?」
レゲインはしきりに背後を伺う。ピシャピシャとレゲインにだけ聞こえる睦の足音と自分の足音に混じり別の足音が聞こえて感じたのだ。
「どうしたんだ?」
「誰か歩いてない?」
「何も聞こえないけど……美羅が言ってたけど、近所で奇怪な殺人事件があって、幽霊のボクに犯人が捕まらないから気をつけてって言ったんだ」
「……奇怪?」
「美羅が居ないときに見たんだけど、本当のミンチになって道端に散らばってーー」
レゲインはそこで止めた。睦の事を幼い子供として見ていたからだ。
「…………」
「何で俺を脅すんだよ」
「怖そうだったから」
それもそのはずだ。数日前から感じていた視線が最近は音が組み合わさり、気配をより近くに感じるのだ。
「……まさか、オグル?」
「こっちにオグルが居たら一人じゃ済まないと思うんだ」
レゲインは殺人事件の話をしたのでは無い。自分の周りの話をしていたのだ。
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