第20話 餓死

レゲインが口を開こうとすると、出だしが三人で被り中断された。そこで紗倉が話す事になったが、突然エベが飛び出してきた。

「じゃーんなの! 多分、お久しぶりなの?」

少年はエベを見て目を見開き涙を浮かべた。

「ないてるの?」

「違う。なんでお前がいる」

「見ての通り死んだからなの。しばらく見ない間にますます目が死んだの」

「何の用? ボクは動けないのに」

そこで、佐々倉が前に出て要件を話した。すると少年は首に巻かれた赤い犬用の首輪と繋がった鎖を弄る。

「ボクは死んでも繋がれてる。外れないと協力どころじゃない」

「それ、外せばいいんだろ?」

レゲインは少年が頷くと扉の残骸を退けた。

「う、嘘ですよね?」

「人骨?」

紗倉と佐々倉は扉の下から現れた人骨と朽ちた帽子に服、鎖、首輪を見て息を呑む。

レゲインはそれを諸共せずに少年の遺骨らしき骨の上から首輪を外した。

すると、少年の首輪が光り、鎖が千切れた。

「おぉ、さすが。年上……」

「その言い方気に食わないんだけど」

感激する少年の前に紗倉が出る。

「えっと、名前は?」

「ボクはむつみ

「何でこんな所に?」

少年が考え込む様な仕草をしたので、レゲインは記憶喪失を疑った。

「家に帰る途中、捕まって気が付いたらここに居た。繋がれててお腹空いて動けなくなってこうなった」

「ご、ごめんね、変なこと聞いて」

「大丈夫。苦しかった部分は欠けたから。ボクの能力使うの?」

欠けたとは魂の一部を構成していた記憶が欠け、幽霊として彷徨っているという事だ。

エベとレゲインが頷くと睦は首輪を持つ様に言い、付いて来てと外へ出た。

エベは睦に協力の理由を聞かれレゲインと自分の記憶について話した。それを聞いた睦は快く引き受けた。

「ボクの力は貸すよ。でも、使うまでどんな能力か分からないから、あまり期待しないで」

山から下りるとエベがマジックミラーを指差す。

「じゃあ、試しに鏡潜るの」

「なんで? 目的達したっしたろ?」

「まだ、オグルが居るの。さっき紗倉お姉ちゃんが聞いた声なの」

睦は目があった紗倉達を見て頷いた。


鏡をくぐり裏世界へ行くと山を避けるようにしてシャドーマンが直ぐそば。徘徊している。

「山のふもとじゃなかったら襲われてたよね……」

「考えたくもないですね」

すると睦が四人の前に出た。

「それで、戦闘向きなのは誰? ボクの力使う人」

三人ともが手を挙げたので睦は少し驚き馬鹿にしたように目を逸らした。

「って、戦ってんの俺だけだろ?」

「私だって戦ったじゃん。レゲインにはエベが居るでしょ?」

「私なんてエベに嫌われてますよ!」

佐々倉に同情したのか二人は目を逸らしどうぞとその場を譲った。

「ち、ちょっと私、傷つきますよ!?」

「君で良いんだね、ん」

睦は佐々倉に手を差し出す。佐々倉は首を傾げ触れるのを躊躇った。

「手だよ。触れないと能力が分からないから」

佐々倉が触れると睦は形を黒い刀へと変えた。これぞ日本刀という形と色だ。

佐々倉は嬉しそうに構えていた。

「これは名刀っぽいです!」

戦闘向きでは無いと思っていた睦自身が驚く。

紗倉が山の方を見るとエベは慌ててレゲインの手に触れ武器に姿を変える。すると山の方から黒い影が飛んで来て目の前に着地する。

「アレはボクのオグルだね」

黒い霧の中に赤い目をした真っ黒な虎が居た。口からヨダレを垂らし首に睦の物と同じ首輪をつけていた。

睦に言われ佐々倉が虎の前に出た。

「行きますよ!」

虎は獲物を見つけ襲いかかった。佐々倉は刀を抜き虎に斬りつける。

一撃目は当たったが二撃目を口で止められ、佐々倉は重さに耐えられず刀の先を落とす。

その隙を見た虎は刀を離し佐々倉に飛びかかった。

ガードのために振り上げた刀は音を立ててへし折れた。

佐々倉は避けようとするが体が追いつかない。目を瞑った瞬間、目の前に来たレゲインが虎の攻撃を剣で弾き突き飛ばした。

「大丈夫か!?」

「は、はい」

レゲインに腕を引かれ虎から距離を置くと睦は元の姿に戻る。

「やっぱりボクは戦闘向きじゃないよ」

「睦はサポーター向きだよね。そうだね、試しに誰かの手に触れた後体に触れたら?」

「エベは戦闘向きで良いね。ボクはサポーターとか面倒だよ」

そう言いながらエベに言われた通り佐々倉の腹部に手を当てた。

「どう? 何か変わった?」

「いえ、特に変わった感じはしませんが」

睦は困ったというように頭をかいた。

「試しに二人にも触れるよ」

最後にレゲインに触れたところで後ろに虎が忍び寄るのを見た睦はあっと言って走り出した。

「え? あ、おい! なに……」

睦に続いて紗倉と佐々倉が青ざめて逃げるのでレゲインは恐る恐る振り返る。

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