第19話 逃亡?
レゲインは女子生徒の話を聞き仲間に入らなければ最終的に濡れ衣を着せられることを理解する。
「待ってください先輩。俺は先輩方が寿命を縮められても構わないので誰にも言いません。俺にも濡れ衣を着せるのは遠慮していただきたい。です」
レゲインは急いで階段の扉を開け、先輩達の方を見た。
「良い余生を……」
先輩達が追いかけてくるのを見て慌てて扉を閉め階段を駆け下りた。
やばっ! 俺、変なこと言ったか!?
紗倉と佐々倉、エベは次に行く場所を決め、レゲインを呼びに行こうと廊下に出た。すると向かおうとした方向からレゲインが全速力で走って来た。
「どうしたの?」
「ヤバい、タバコ吸った事公言されると勘違いした上級生が追いかけて来てる!」
紗倉がレゲインの後ろを確認するが、レゲインの足の速さもあって全員置いていかれているようだった。
「というか、公言してますよ」
「あ、こないだ屋上で見つけたアレね」
紗倉は中にエベが居ることを伝え、レゲインにレゲインの鞄を渡した。
後ろを見ると上級生が追いついて来て血走った目をしている。
「やばっ」
レゲインは何故か紗倉の腕を掴み、引いて駆け出した。佐々倉も慌てて二人についていく。
「ちょっと、レゲイン! 待って、私そこまで走れないって」
「追いつかれたらリンチだって!」
レゲインは目の前に見えた、廊下を走っていることを注意しようとした教師に追いかけてくる上級生とタバコについて話して押し付けそのまま学校から飛び出した。
振り切った所で止まり、レゲインは紗倉を気遣う。
「大丈夫か?」
紗倉は息を切らしレゲインを見上げた。
レゲインは少し汗をかいただけで、そこまで息切れはしていない。
「大丈夫だけど……」
「な、なんで私を置いていくんですか……速いですよ」
レゲインは軽く謝り、佐々倉が資料から探した心霊現象が起きた山道に向かう。
佐々倉はそこへの道を懐かしい場所を歩くようにして歩いていた。
「どうしたの?」
「ここは、佐々倉家の元本家があった場所なんです。移動する前は住んでましたよ」
「住んでたって、美羅ちゃんの住んでる今の家、此処からそう離れてないじゃん」
佐々倉の本家は今やこの県内には無いのだ。
山道への入り口前で紗倉が足を止めた。レゲインと佐々倉の二人は紗倉の方を見た。
「あ、あのさ、なんか猛獣みたいな鳴き声が聞こえるんだけど」
「気のせいだろ?」
紗倉は少し怯えながらも山道へ足を踏み入れた。
山の中腹まで来ると道に草が生い茂り進めなくなっていた。広場の様な場所には朽ちていたが、木の机と椅子が設置されていた。
「エベ、その幽霊に会うには鏡が必要とかないよな?」
「こっちに居る可能性が高いの、向こうだったら喰われてるかもなの」
レゲインが周りを見渡して居ると目の前を何かにつられる様にして紗倉が歩いて行った。
「おい、紗倉?」
「向こうから、泣き声がする」
「猛獣のか?」
「うんん。人のだよ」
そう言って元から道の無い草むらを掻き分けて先へ行ってしまった。
レゲインがその草むらに入るのを躊躇っていると佐々倉が背中を押して無理やり後をついていかせた。
草むらから抜けると、古くなった木造の倉庫が建っていた。そこまで来ると二人にも人の泣き声の様な声が聞こえる。
「ガチで幽霊じゃん」
「でも、昨日のオグルもこんな感じだったじゃないですか」
「……いや、これ、泣き声じゃなくて声だ」
レゲインは目をパチクリさせる二人をよそに倉庫の扉に張り付き耳を当てた。
扉の向こうからは幼い子供のつぶやき声が響いてくる。
扉を開けようと引いたり押したりするが開かなかった。
三人で色々と模索した結果、ぶち壊すことになった。レゲインが蹴り飛ばしただけで扉は、いとも容易く吹き飛んだ。
中へ入ると天井に空いた穴から光が薄っすらと差し込んでいた。殆ど真っ暗な倉庫の奥に目を凝らすと黒い通学坊を被った少年が立ち上がった。
「誰? 今度は何するの? 拷問? 首吊り?」
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