第17話 記憶の奪還
吊るされたレゲインを見て、佐々倉は自分達を助けるために投げた剣を掴み、レゲインを掴んでいる髪を狙って投げた。
が、虚しくボタンと池に落ちる音しか聞こえなかった。
「ごめんなさい!!」
胴を締め付ける力が増し、レゲインは痛みに顔を歪めた。
徐々にオグルの顔に近づけられる。
目の前に顔が迫った時、レゲインは咄嗟の思いつきで、剣でオグルの顔を斬りつけ上に投げた。怯んだオグルは少しレゲインを顔から離す。
「エベ戻れ!」
剣が限界まで上がった時、エベはレゲインの声を聞き元の姿に戻った。レゲインのいる所より少し高い場所で。
怒ったオグルは大口を開けレゲインを口へ運ぶ。
「やばっ!!」
エベが落ちてくる。レゲインは口に入る寸前、手を伸ばしエベの手に触れた。
二人は口に放り込まれるレゲインとエベを息を飲んで見ていることしかできなかった。
「オグルって人自体を食べるの!?」
「はい、シャドーマンより食欲旺盛だと聞いています」
「え? じゃあ、レゲインは……」
すると、オグルの首がもげ、水に落ちた。
二人は驚き、オグルの方を見る。オグルの切れた首からレゲインが剣を掴んで這い出してきていた。
オグルは黒い霧となり消えてゆくが、レゲインは切れた首に足をかけて陸に飛び移ろうとするが、頭に激しい痛みを感じ池に落下した。
池に落ちた直後に元の姿に戻ったエベはバタバタと手を動かし溺れかけていた。
「た、助けてなの! 死んでるのに溺死とか笑えないの!」
紗倉と佐々倉は側にあったボートを使いエベの元へ急いだ。溺れかけたエベの腕を紗倉が掴み引き上げようとしたが、重心が寄りボートがひっくり返りそうになった。
「美羅ちゃん、向こう側に寄って」
「は、はい」
エベは引き上げたが、レゲインが見当たらない。
「もしかして、死んじゃったとか」
「縁起でもないですよ。やめてください」
そのとき、ボートに大きな衝撃が加わった。後ろを振り向くとレゲインがボートにしがみついている。
「悪いけど……引き上げて」
レゲインを引き上げると水で濡れて重くなった上着を脱いでいた。池の底に沈んだのだろう。
「生臭い……最悪だろこれ……」
生きていたのを見た三人はホッとしたのかクスクスと笑った。
レゲインはその夜、一人で自分の家にいた。シャワーを浴終え、リビングに行くと写真が目に止まった。
本に挟まっていた黒髪の少女を写した物だ。
「こいつ……」
オグルを倒したことにより思い出した記憶を思い返すが、殆どの人物はモザイクが掛かったかのようにぼんやりとしていた。
「あ、確か……」
ある事を思い出し、本を取り敢えず並べた本棚から一つ取り出した。それは、魔法陣の書き方を載せたものだ。
机に紙を広げその通りに書く。
池に沈んだ時、頭に流れ込んできた劣等感の記憶、その中で見たものだ。
「あの人、エベを水に放り投げたの!」
「美羅ちゃんは、投げるのが苦手なだけだよ。ごめんね」
紗倉が佐々倉をフォローするも、エベはむすっとした顔をする。すると何かを思いついたのか立ち上がり手を叩いた。
「そうなの、エベが死ぬ前、エベより霊力の強い面倒な男の子がいたの。確か、むつみって名前だったの」
「それで? その子を捜してどうするの?」
「エベの記憶がもう少し戻れば分かるの」
紗倉はその言葉について色々と頭の中で考えながら大好きなアイスを食べる。
エベはもの欲しそうに指を咥えそれを見ていた。
「エベは幽霊でしょ?」
「魂なの!」
「食べれるの?」
「無理なの……食べたいの」
「どうやって?」
紗倉は一口スプーンですくいエベの口元に差し出した。食べようと口でくわえるが虚しくもすり抜けた。
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