第28話 幼い頃の恐怖
「何で紗倉には言わないんだ?」
「心配されるから」
「そうじゃないんだ、何で紗倉に対してそこを気にするのかなって」
レゲインは迷って答えた。
「それは、まぁ……紗倉に悲しまれると……不快だし」
「好きなんだ?」
「……は?」
紗倉は咲良に自室から出るなと言いつけられ膨れていた。帰りが遅かったことで咲良は心配して自由に行動ができなかったのだ。
ムッとした勢いで紗倉は母親に連絡をした。
『佐倉?』
「あ、お母さん知ってたんだよね? お兄ちゃんが帰ってくるってこと」
『えぇ、咲良から聞いたからね』
咲良に対する不満を母親に全て話した、すると母親は咲良の方を持った。
『仕方ないの、お兄ちゃんは紗倉がまた危ない目に合うのが怖いの。アレでも大分落ち着いた方なんだよ?』
「落ち着いたって?」
『知らないの? お兄ちゃん、カウンセリングの為に施設に入ったのよ?』
初耳だった。事件に付いて聞くと母親は少し躊躇いながらも答えてくれた。
幼い頃、咲良は不審者に連れていかれそうになった紗倉を目撃し助けに入った所、代わりに連れていかれた。
紗倉は一人、泣きながら家に帰って来た。何があったか聞くと「お兄ちゃんが連れていかれちゃった!」混乱する紗倉から何とか聞き出せた一言だった。
その後、警察の捜索により咲良は無事見つかり帰って来たが、遠くを見つめ放心状態だった。警官が発見した時には裸で倒れており、怪我もなく意識もあったものの呼びかけには反応しなかったらしい。咲良の見つかった現場の状況からは強姦を受けた事が分かった。
帰ってから紗倉に会ったことでようやく元に戻ったが、完全にではなかった。男性の声を聞いただけで日常生活に支障をきたすほどにパニックになった。そこで、母親は咲良を精神科に連れて行き、別の土地でカウンセリングを行いながら生活させる事にしたのだ。
「知らなかった。何で言ってくれなかったの?」
紗倉は幼かった上、咲良の様な目には合わなかった為に忘れていたのだ。母親は無理にトラウマを植え付けたく無かった為、紗倉には黙っていたのだ。
『それに、自分を責めたりもするでしょう?』
「そ、そうだけど。そういば、その変態犯人は?」
『捕まってないの。まだ何処かにいるかもしれないから紗倉も引っ越させたかったけれどね、美羅ちゃんが居るでしょう? 学校に誘われたから一緒に行かせてあげたいとも思ってね』
「そう……」
『あ、そうそう、最近そっちで結構悲惨な殺人事件があったそうね』
「殺人事件??」
『知らないの? 家からそんなに離れてないわよ? 確か、高そうなマンションの近くでミンチになってたとか。気をつけてね?』
「え? うん……?」
通話を切り、母親から聞いた話を頭の中で整理する。そこでふと思い出した。紗倉がテレビをつけたとき、
決まって事件に付いての番組が流れていたのだ。それを見た咲良は毎回直ぐにテレビを消した。
「ま、まさか……」
紗倉は気になり、リビングへ行きテレビを付けた。そこには母親から聞いた事件が取り上げられていた。
被害者は男性、死因は路上でミンチになるほどの圧死という奇妙なものだった。
だが、もし被害者が数年前の犯人だとして、既に死んでいる彼のストーカー行為を確認する必要などあるのだろうか?
「ストーカー?」
「ストーカーって言えばなの、お兄ちゃんしきりに周り気にしてたの。あと、睦が昨日、お兄ちゃんの周りにシャドーマンが少ないって」
「オグル? えっ!?」
そこへ、テレビの音を聞きつけて咲良が降りて来た。直ぐにテレビの電源を切った。
編入生はコウモリ? ラピーク @kurape
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。編入生はコウモリ?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます