少年の正体は動物?
第8話 幽霊の頼み事
数日後、紗倉とレゲインの二人は病み上がりの多幡に呼び出され部室に来ていた。美羅の呼んだ救急車で運ばれ命に別状はなかったのだ。
「いやーまいったまいった、片腕を失うなんてな」
当たり前の様に明るく振る舞うので普通に接しざるを得ない。
「実は、まだ本当に病み上がりで医者に許可を貰ってここにいる。すぐ戻らないとな」
「戻れよ……」
「所で佐々倉は?」
美羅は幸夜の姿を見てショックを受け学校を休んでいた。実際、事情聴取を受けた時もショック状態でまともな会話もままならなかった。
「そうかそれは……」
美羅を思い出し俯くが直ぐに顔を上げた。
「お前らのその度胸、順応性気に入った。もし気が向いているのなら、この入部届けにサインをして職員室に持っていくといい」
多幡は机の上に二枚の紙を置くと、出口へ行き「じゃあ、また来月な」と言って出て行った。
「先輩。明る過ぎるよね」
「暑苦し」
「霊力があるの。見えてて多分事情通なの」
三人目の声に二人は当たり前のようにさらに納得して頷くが、レゲインでも紗倉でもない声を聞き驚いて声のする方を確認した。
半透明のあの少女がキョトンとして2人の間に立っていた。
「お前……!?」
「あの、鏡の向こうにいたんじゃ……?」
少女は座敷に上がり腰かける。
「あそこは消えかけの欠片の行く場所なの。欠片でもないし消えかけじゃないの」
「何でここにいるの?」
「姿が見える二人にお願いがあるの」
「お願い?」
紗倉の問いに少女は頷く。
「今、あたしは名前も何も思い出せないの」
目の前にいる幽霊の少女も記憶喪失だと聞き二人は凝視する。
「だから、人形を探して欲しいの」
少女の探す人形には名前が書いてあるのだ。それだけでなく何か重要な事を思い出せると知っていた。その為、少女にとって直ぐにでも見つけたい物だった。
「検討はついてるの? 俺らに利益でもある?」
紗倉はレゲインのその言いぐさに気が引けたが黙って行方を見ていた。
「人形を見つけてくれたら記憶を取り戻すの手伝うの」
「なんで知ってるんだよ? しかも他人がどうこうできるものか?」
「できるから言ってるの」
レゲインはしばらく考えた後、了承した。すると少女は夜九時に学校の屋上へ来るように言って扉をすり抜けて出て行ってしまった。
「じゃあまた明日ね」
紗倉は関わらない為に先に出て行く。
レゲインに手を振って廊下に出たつもりだったが後ろからレゲインが付いてきている。
学校の外へ出ても紗倉の後を付いて来る。
「な、何かあるなら言って付いてきてよ。気味悪いよ」
「九時に屋上。俺の家よりお前の家の方が近いし、シャワー貸して」
「……いいけど。図々しいね」
紗倉はレゲインを家に上げた。
「ねぇ、タオル貸して。洗って返すから」
「いや、いいよこっちで洗うから好きに使って」
それを聞いたレゲインは頷くと風呂場に向かった。二階からタオルを持って来た紗倉は脱衣所の扉に耳をつけシャワーの音がするのを確認し、扉を開けた。
曇りガラスの向こうで彼の影が動いている。
「…………」
軽い好奇心を抑えながら脱いである服の横にタオルを置く。すると曇りガラスの向こうからレゲインが話しかけてきた。
「ねぇ、シャンプーとか借りていい?」
「こだわらないの?」
「記憶ねぇし」
シャワーの音だけ響く中、紗倉はしばらくその影を見ていた。
紗倉は本当に紗倉の使っているシャンプーを使用しているのか、どんな体型をしているのかと好奇心を揺さぶられ戸に手をかけようとした。
すると、シャワーの音が止み曇りガラスの戸が少し開き彼が顔をのぞかせた。
「出たいんだけど」
「ご、ごめん、お、親の職業病みたいなのが」
「言い訳する前に出てけよ!」
顔を赤くして紗倉は慌てて脱衣所から出て行った。
「あいつ何考えてんの?」
レゲインはその反応に困惑しながらも持ってきてもらったタオルで頭から拭いた。
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