第15話 噂の池

佐々倉に言われるがまま紗倉とレゲインは入部届けを出し、噂になっている場所まで向かった。

「普段の事が自然と会話に出てくるのは思い出す前兆じゃないんですか?」

「だったら、お前みたいな奴、知り合いにいた事になるんだけど」

「嫌なんですか!?」

「苦手なだけ。周りの反応が」

佐々倉がショックを受けてる中、レゲインは少し距離を置こうと後ろを歩いていたエベの隣に並んだ。

「美羅ちゃん、大丈夫だよ、多幡先輩とはいい傾向じゃん。ね?」

「そ、そうですね……」

しばらくして、公園の池の前に辿り着いた。公園内は人がいなく、別世界に来たかのような静けさで鳥の鳴き声が響いていた。

池での噂について佐々倉が説明をする。

「夕方から夜明けにかけて、通った人がすすり泣く声を聞いてるんです」

「すごくベタな幽霊だね……他に何かないの?」

「自殺したという噂ぐらいですかね」

紗倉とレゲインは木の柵に手を置き水面を覗き込む。池の水は濁っているのか様のように真っ黒に見える。

「どうだ? 黒髪の女見えたか?」

紗倉はレゲインの発言に驚き顔を見る。

エベは柵に足をかけて池を覗き込んだ。

「記憶によって食べるシャドーマンが選ばれる事があるの。自殺した女の人の食べた記憶って……」

「それって嫉妬とか、その辺の記憶って事か?」

エベは頷いた。

「お前って嫉妬とかする?」

「なんで私に聞くの。友達のことでならた事あるかな」

レゲインは紗倉を見て微妙な反応をした。

その後、何か起きないかと池の周りを歩き公園内を探索した。

夕日が沈み始めた頃、紗倉たちは公園のベンチに座り池の方を眺めていた。

紗倉がふと尋ねる。

「ねぇ、エベ。何で向こうの世界からこっちに影響があるの?」

「霊力が強まり過ぎて世界を隔てる壁が薄くなるからなの。シャドーマンが集まり過ぎると時々、こっちの人に目撃されるの」

「じゃあ、シャドーマンになる前のは?」

「それは、まだこっちの世界をウロウロしてるだけなの。見えても仕方ないの」

レゲインはその話を隣で聞きながら缶に入ったココアを飲む。ある事を思い出し缶から口を離した。

「オグルに害がない奴つったけど、それってどんなやつだ?」

「助けられなかったって感じの未練を持った人のなの。切れたものを治せる程の治癒能力を持っているの」

「それが、物だったら?」

「死んだ人の一部なら魂のない人形になるの。無機物は知らないの」

それはつまり、腕から人の身体を再生する事が可能だという事を示していた。レゲインが頭の中に浮かべたのはコールかもしれない布切れだ。

考えながら缶に口をつける。

治ったとしても蝙蝠になれるか試してそれから何かあるわけでもなかった。

すると、耳に女性のすすり泣く声が聞こえて来た。驚いて紗倉と佐々倉、エベを見る。

「美羅ちゃん、聞こえる?」

「聞こえます。じ、実は、前来た時も聞こえたんです。捜索前に学校の噂が来ましたから」

レゲインはココアを飲み干し自動販売機の横の缶を捨てる穴に投げ込んだ。

「凄っ……」

紗倉と佐々倉はそれを見て声など忘れ軽い拍手をした。

「な、何だよ、偶然入ったものに拍手されると困るだろっ!」

「偶然でも凄いですよ」

佐々倉が柔らかい笑顔でパチパチと拍手をしながら褒めた。脇を締めているので余計に胸が強調されている。

「エベ、この辺から向こう側に入ったりできるのか?」

「そうなの……あ、お手洗い場の方はどうなの?」

「あぁ、そっちでいいか……」

レゲインとエベが当たり前のようにその方向へ歩いて行くので紗倉と佐々倉は驚きつつついて行く。エベは当然のように女子トイレの方へ入るのでレゲインも普通について行った。

「あそこまで堂々としてるとイヤらしさが無いよね」

「人が居たら危なかったですよ。通報間違えなしですよ? 特に自意識過剰なお婆さんとか」

佐々倉は時々、毒舌になる。

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