第22話 結界

夜、レゲインは一人物音で目を覚ました。横で寝ている紗倉か佐々倉だと思い起き上がって見たが、二人とも眠っているようだった。

「は? 何の音だよ……」

障子の方に目をやると少し開いた隙間から人の目が見えた。慌てて布団から飛び出し障子を開いたが、そこには誰も居ない。

「んーレゲイン、うるさいよ」

紗倉の声に謝ろうと振り向いた途端に顔面に枕がぶつかった。


翌日、紗倉とレゲインは同時に目を覚まし顔を見合わせた。紗倉の隣で寝ていたはずの佐々倉は布団をたたみその上に置き手紙を残して居なくなっていた。

「金持ちって大変だな」

「……何でレゲイン、そこで寝てるの? 違和感とかなかったの? 普通、別の部屋でしょ」

「何で?」

「いや、女子と男子が同じ部屋って」

「あ、違和感なかった」

昨夜、レゲインが寝る時には当たり前のように布団が三つ並べられていたのだ。

「俺、女子だと思われてたかも」

「どう見ても男」

朝食を用意してもらうのも申し訳なく感じた為、二人は布団を片付け直ぐにお礼を言って屋敷を出た。

「お腹すいた……」

「喫茶店とかは? 俺、金出してもいいけど」

「奢ってくれるの? 大丈夫なの? そのお金、元々の出元が分からないじゃん」

「……大丈夫なんじゃね? 俺宛に置いてあったんだから」

紗倉行きつけの喫茶店へ行きモーニングを注文する。

「えっと、レモンティー二つ」

「……今の一つ。アイスココアで」

店員は注文を受け確認すると店の奥へ行った。

「何でココアなの?」

「いや、なんか紅茶って……」

「嫌いなんだ。記憶が戻ったの?」

「全然。こないだ飲んだ時苦かったからなんかな」

たわいもないことを話しながら朝食を摂った。



栗色の髪をした青年が狭間から紗倉とレゲインを見ていた。そこへ一人の少女が背後から迫り、服を掴んだ。

「オグルは見つけた?」

少女は小さく首を振り青年が触れている鏡の向こうを不思議そうに眺めた。

「サボってるわけじゃないよ」

「オグル退治は仕事じゃない。霊具の回収が仕事だった」

「あのオグルを発生させたのは自分なんだから仕事の一環だよ」

鏡から手を離すと映っていた景色はきえ、映るべきモノを映す。

鏡を見た二人は驚愕した。二人の後ろに黒い服を着た女性が立っていたのだ。

「見つけた……」

女性が手を伸ばすのを見た青年は振り返り、少女の手を握った。

すると、女性の手は見えない壁に弾かれる。

「人か……? 何でこんな所に」

「クソ忌々しいわ。こんな所でも結界があるなんて」

二人を囲む様に立方体の壁があるのに気がついた女性は悔しそうに舌打ちをし、立ち去った。

「追わない?」

一般人の狭間への進入の管理は青年の役目では無い。

「僕の仕事は、オグル退治と霊具の回収だからね」

「霊具の回収だけ」

「それに、久しぶりに顔も合わせておかないと」

「妹さん?」

青年は少女の問いにああとだけ答えた。



レゲインはふと視線を感じ振り返った。前を歩いていた紗倉はレゲインが足を止めたのに気が付き後ろを確認する。

「レゲイン? どうしたの?」

「え、いや……なんか居た気がしたんだけど。こう、不気味な」

ベッタリとした視線を思い出し身震いをする。

「気持ち悪いな」

「大丈夫? 風邪?」

「そっちの気持ち悪いじゃない!」

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