*話 僕は絶望する。

 いや、別に死んでたわけじゃない。

 

 失踪していたわけでもない。

 

 だた、見えなくなっていただけなんだ。

 

 そこにいたんだけど、見えていなかった。

 

 どこにでもいたんだけど、見つからなかった。

 

 だれにも、ね。

 

 だれも目を合わせてくれないし、だれも話しかけてくれなかった。

 

 そういう力が身についたんだと思った。

 

 だけど違った。

 

 違ったんだ。

 

 僕の勘違いだった。

 

 だから僕は静かにするのをやめた。

 

 ヒトに迷惑をかけないようにするのをやめた。

 

 べつに構わないだろ、と思った。

 

 誰にも見られないんだ。

 

 見えていないんだ。

 

 一緒だろう、と。

 

 みんなが僕を避けた。

 

 僕に近づかないように。

 

 僕に関わらないように。

 

 みんながみんな、僕から離れていった。

 

 まるで僕がそこにいるかのように。

 

 僕が見えているかのように。

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それでも僕らは絶望する。 飴雨あめ @ame4053

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