あっという間に6話まで読んだ。
読みながら何度も「うまいなあ」と感嘆した。
「広めの肩幅や、捲りあげられた黒いジャケットから覗く引き締まった二の腕」
「軍靴のような編み上げブーツに納められたパンツの上からでも分かる鍛えぬかれた下半身」
主人公ユーリの容姿がほとんど一筆で描かれ、鮮烈な印象を読者に与えている。
キャラの描写力はキー太郎さんの強力な武器で、5話に登場するオペレーターの女性カノン・バーンズも登場と同時に鮮烈な印象を読者に与えるのに成功している。
「うまいなあ」と感嘆するより先に、彼女に好意を持っている自分に気づいて驚いた。
キー太郎さんの文章表現は巧みでかつ意欲的だ。
「ユーリの気分は空へ上がるドローンの如く軽くなっていた」
こういうドローンを使った比喩を自分は初めて見たから楽しかった。
最初に異形が闊歩する未来世界の描写があって、次にイスタンブールの門→イスタンブールのスラム→ハンター協会の支部→秘密のオペレータールームー→ゴブリンの集落……とほぼ一話ごとに新しい場面が展開するのがすごい。
主人公ユーリ・ナルカミも危機の連続で、門への疾走→偽造ライセンスの獲得→偽造ライセンスを使う潜入→賢い女性との問答(機械はだませるのにアナログな問答で履歴の不審点を見抜かれるのがおもしろい)と危機がレベルアップして読者を冷や冷やワクワクさせる。
で今ゴブリンの集落で大アクションが展開しているが、ここが今まで一番危機感が薄いというか、安心して読んでいられるのがおもしろい。
それほど圧倒的にユーリが強いのだ。
SF、ファンタジー、悪漢小説、アクション……いろんなジャンルのいいところを果敢に取り入れた、こんなホットで勢いのある小説にいち早く出会えた自分はラッキーだ。
タイトルの『終末の歌姫と滅びの子』の意味するところ、すなわち物語の骨子は今はまだまったくわからない。
なのにすでに物語は全開で始まっていて、読者を早くも冷や冷やワクワクさせている。
これはすごいことだ。
「スーパーファンタジー」は初耳の言葉だが、このホットな小説にふさわしい形容と思う。
今後のユーリの活躍が楽しみです。