三話 森満ミカはばれる。

「まぁまぁ、人間にしては可愛いかな」


 私は鏡の前でクルクルと回りながら、自分の容姿を確認した。


 元の姿ほどじゃないけど、この人間界においては、そこそこに可愛い部類だと言える。


 全体的に少しふっくらしていたり、身長が低めだったりはするけれど、人間の容姿に完璧を求めても仕方ないだろう。


 ――えっ? 人間になる前? んー、なんだったかな。妖精とか天使とか、なんかそんな感じだったと思うんだけど……忘れちゃった。


「まっ、昔のことを気にしても仕方ないよね」


「――ミカちゃん? なにしてるの?」


 階段を下りてきた倉敷モモちゃんに声をかけられた。


 そうそう、ここは階段の踊り場だよ。


 ここに大きい鏡があるんだ。


 ……あれ? ていうか、私、どうしてこの子の名前を知っているんだろう?


 初対面だと思うんだけど。


 ――まあ、いっか。


 私は妖精だし、天使だし、それぐらいのこと知ってても不思議じゃないよね。


「ううん、なんでもないよ」


 私はにっこりと笑って、モモちゃんに返事をする。


「モモちゃんはなにしてるの?」


「私はただ、階段を降りてただけだよ?」


「あ、そっか、そうだよね」


「うん、階段を降りてたら、ミカちゃんがクルクル回ってるのを見つけたんだよ。だから、どうしたのかなあ、って思って」


 モモちゃんは不敵な笑みを浮かべながら、私のことを横目で見てくる。


「鏡を見ながら、私ってかわいいなあ、とか――思ってたの?」


 冗談っぽく、そんなことを言うのだった。


 どうやら馬鹿にされてるみたいだけど、まあ、図星なんだから仕方がない。


 だから私は、


「そうだよ。人間にしては可愛いかな、って思ってたんだよ」


 と、少し嫌味っぽく、冗談っぽく、本当のことを返す。


 するとモモちゃんは、目を丸くして、首を傾げた。


「えっ? ミカちゃんって、人間じゃないよね?」


「えっ……」


 あれ……どうして、ばれたんだろう。

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