それでも僕らは絶望する。

飴雨あめ

First School World

一話 三津傘ヨコオは絶望する。

 最初は、ひとりだけだった。


 一番仲のよかった友達が、僕のことを無視し始めたんだ。


 でも、それだけだった。


 それだけで終わると思ってた。


 だんだん、僕を無視する人数が増えてきた。


 最終的には、クラスの全員が、僕のことをいないものとして扱うようになっていた。


 このクラスに、僕の居場所は無くなった。


 だから僕は教室を飛び出て、屋上に向かった。


 この学校の屋上は、誰でも、いつでも、自由に出入り出来るようになっている。


 フェンスなんて物も付いていない。


 生徒がいつでも飛び降りられるようにと、先生達の配慮だそうだ。


 僕は屋上の縁に立って、空を見た。


 青くて綺麗な空だった。


「君、死ぬのー?」


 後ろから声をかけられた。


 失礼な、僕はここから飛び降りるだけだ。


 振り返ると、真稚貝まちがいナオが立っていた。


 クラスは違うが、学校内で唯一髪を金髪に染めていて目立つ奴だから、僕も名前は知っている。


「死なないよ」


 僕は無愛想に答えて、また空を見た。


 さっきよりも、少し曇った気がする。


「そっかー、そうだよねー、だって君――」


 真稚貝はにやけた声でまだ何か喋っていたけど、僕はそれ以上聞く気が無かったので飛び降りた。


 空がどんどん遠ざかる。


 空がどんどん青くなる。


 最後にこんな綺麗な空を見られるなんて、幸せだ。


 だけど、それでも――。


 それでも僕らは絶望する。

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