六話 唐墨ミサキはコトリを見る。

 みんなが私のことを見る。


 だから私はみんなが好きじゃない。


 嫌いじゃないけど、好きじゃない。


 そんなに私のことを見ないで欲しい。


 うっとおしい。


 コトリちゃんは私のことを見ない。


 空ばかり見てる。


 だから私はコトリちゃんが好きだ。


 私はコトリちゃんばかり見てる。


 これじゃあ、コトリちゃんに嫌われてしまう。


 そう思った私は、コトリちゃんに声をかけた。


「なんでいつも空ばっかり見てるの? 」


 コトリちゃんは少しびっくしした顔をして、少し赤い顔をして――。


「空を、飛びたいんだ」


「飛べないの?」


「飛べないよ?」


「そっか、飛べるといいね」


 ――その日から、私はコトリちゃんと一緒に給食を食べるようになった。


 私はコトリちゃんが好きだ。


 コトリちゃんばかり見てる。


 コトリちゃんは空が好きだ。


 空ばかり見てる。


 私のこともたまに見る。


 私は空が嫌いだ。

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