来栖春がペットショップで出会ったのは、高校時代のクラスメート、南美川幸奈だった。
ただし、幸奈は店の商品として、春は客として再会したのだ。
社会評価点が人生を左右し、そこから落第すればヒューマンアニマルという人間の形を中途半端に保ったケモノに加工されてしまう。幸奈も犬のような耳と尻尾を持った人間未満の存在になっていた。
幸奈は春をイジメた主謀者の一人だ。にもかかわらず、春は幸奈を引き取り、人間に戻してあげると約束する。春もまた過去に縛られ、そこから動けずにいた。
バックトラックのように行きつ戻りつする二人の旅路の先に、人間であることの意義は見つかるのだろうか。
まさに理想的な、SF小説であり、恋愛小説である。
どこかの神様少女ではないが私の最大のポリシーは、『ただの小説には興味はありません』であり、あたかもどこかで見たような翻訳調のSF小説や、予定調和でステレオタイプの恋愛小説なんて、心の底からノーサンキューだ。
しかし、この『アゲイン 高校の同級生が、ペットショップで売られていました。』は、ひと味違う。
近未来の日本においては、社会的落伍者は問答無用で『人犬』などの人間と動物とのハイブリッドに改造され家畜扱いされるという、まさしく文字通りのディストピアを舞台にして、高校時代に陰惨ないじめを受けていた主人公が、さる事情で人犬に堕とされた当時のいじめの主犯の少女をペットショップで見つけて、即決で購入して自宅に連れ帰るといった、冒頭部だけで十分狂った内容であるものの、そこから始まる本編においては、少女に対する同情と憎悪とそして何より高校時代から抱いてきたほのかな恋心との間で葛藤していき、この上なき異常で醜い関係だからこそ、いつしか『真の純愛』を育み始めて、ついには彼女を人間に戻すために、狂った世界そのものの改革に挑んでいくという、壮大なる純愛SF大河ドラマへと昇華していくのであった。
とにかく、これまでになく斬新で、そして何よりもいろいろな意味で『刺激的な』作品をお求めの方には、是非ともお薦めの一作である。
この小説を異質たらしめる大きな一因は、どの登場人物にも個性があり、目を覆いたくなるような長所があり、舌を巻くような短所があるところです。
ヒロインの南美川さんでさえ酷く独善的で、不器用で、一人で出来ることなんてほんの僅かで、関わるのに勇気がいるほどのステイタスなのに、何故か自分の全てを預けたくなるような、そんな魅力があります。
下手な物言いで申し訳ないのですが、私はこれを読んで、自分の現実世界が少し尊いものになった気がします。
隣の友達が会話を繋ぐために必死に何かを考えている様子が、好きな人を取られまいとむきになってる同級生が、誰かを傷付けているときに見せる怯えた瞳が、愛おしく思えるようになったとき、あなたはこの小説の住人になるのでしょう。
(b`>▽<´)-bイエーイ☆゛なつき先生見てる!?(b`>▽<´)-bイエーイ☆゛(  ̄▽ ̄)v
はっぴーらっきーすまいるいえーい!!!!
過酷ないじめを受けたことのある主人公が、いじめの首謀者であったヒロインと数年後に再会する。
彼女はとある事情により人間未満と判断され、人権を剥奪されて犬に加工され、ペットショップで売られていた。
その場で彼女を買って帰る主人公。
言うなれば当時とは立場が逆転しているわけだ。
そこから単純明快な復讐劇が始まるのかと思いきや、そうではない。主人公の心理は、一読者の私の目から見ると複雑で謎だ。
作中、いろんな登場人物に主人公は同じような質問をされる。
自分をいじめたやつをどうして助けようとするのか、という類の問いだ。
その質問の答えを追いかけるうちに最新話までグイグイ読んでしまった。おもしろい。
犬に加工された人間を、元の人間に戻す。
その過程で明らかになっていく近未来の社会システム。完璧なようで歪んでもいる(ように私には見える)、そんな社会で生きる人たちの価値観。それらが主人公の前にたちはだかる。
困難にぶつかりつづける主人公は、辛抱強さと優しさと、時に胸がすくような逆転劇も見せてくれる。
耐えがたい苦痛を知ったヒロインは、それだからこその反省と成長を見せていく。かつて自分がいじめた主人公に対する認識や心情の変化は、謙虚かつ誠実だ。
結末まで目が離せない。