濃くて深くて、目が離せない作品

過酷ないじめを受けたことのある主人公が、いじめの首謀者であったヒロインと数年後に再会する。
彼女はとある事情により人間未満と判断され、人権を剥奪されて犬に加工され、ペットショップで売られていた。

その場で彼女を買って帰る主人公。

言うなれば当時とは立場が逆転しているわけだ。
そこから単純明快な復讐劇が始まるのかと思いきや、そうではない。主人公の心理は、一読者の私の目から見ると複雑で謎だ。

作中、いろんな登場人物に主人公は同じような質問をされる。
自分をいじめたやつをどうして助けようとするのか、という類の問いだ。

その質問の答えを追いかけるうちに最新話までグイグイ読んでしまった。おもしろい。

犬に加工された人間を、元の人間に戻す。

その過程で明らかになっていく近未来の社会システム。完璧なようで歪んでもいる(ように私には見える)、そんな社会で生きる人たちの価値観。それらが主人公の前にたちはだかる。

困難にぶつかりつづける主人公は、辛抱強さと優しさと、時に胸がすくような逆転劇も見せてくれる。

耐えがたい苦痛を知ったヒロインは、それだからこその反省と成長を見せていく。かつて自分がいじめた主人公に対する認識や心情の変化は、謙虚かつ誠実だ。

結末まで目が離せない。

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