祖国開戦準備
すらっとした体躯の二人の男がカン・レイのいる
レイは話し相手だった小柄な女性から目を離し、マルティンとクルドを見た。室内にいた小柄な女性ともう一人、初老の男性も二人を見る。
「帰国した。とうとうその時が来たようだ」
「アリトシが2Lを裏切った」
マルティンとクルドが立て続けに言う。
「すぐにヴィナにも連絡しよう」
クルドが
「僕は
クルドは黙って目をキーボードに向けて指を走らせた。マイクとイヤホンをセットして声を吹き込む。
「ウェイビーさんにはもう伝えてありますか」
レイの質問にはマルティンが答えた。
「俺達の顔を見るなり状況を把握して血相を変えてたよ。クルドが済んだら俺も
マルティンの解答は独り言のようだった。
「ハヌルさんが来週オーストラリアに行くのですが、延期した方がいいでしょうか」
初老の男がマルティンに訊いた。マルティンはその時ようやくその男が
「テセウスさん、それからハヌルさんも、お久しぶりです。一般旅行者用の飛行機で行ってください。護衛はつけない方が安全です。アリトシは軍用機を見ただけで発砲してくる可能性があります」
「わかりました。初めから護衛をつける予定はありませんでした。用心します」
通信を終えたクルドが向き直って、直前までと打って変わって軽い調子でハヌル・コに話しかける。
「オーストラリアに行って何するの? 聖地巡礼?」
オーストラリアに聖地はないだろ、とマルティンが冷静に訂正する。質問にはレイが答える。
「ハヌルさんは『建国の物語』の調査のためにオーストラリアに行ってもらうんです。作中に出てくるマチルダ姫の孫にあたるパミラ姫と謁見します」
『建国の物語』は
「そっちも進んでるようで何よりだ」
クルドはハヌルの肩に手を回して言う。
「もしかしたら、そのままオーストラリアにいた方がいいかも」
「どうしてですか」
ハヌルはクルドの腕の中で縮こまっている。
「ここは危険かもしれないから」
本土決戦という言葉が全員の脳裏を過る。通常兵器しか持たない
「すみません。僕が不甲斐ないばかりに、
レイの言葉を聞き、ハヌルがクルドの腕から逃れてレイの手を取った。
「私は逃げません。
「ありがとう」
レイの声に重なって、ヴィナから暗号無線の通信が来たことを告げる電子音が鳴った。
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