祖国の大地に火を灯そう
講和会議の議長に任命された連合王国のイライアス王についてきて、パミラ姫が
毛皮のコートを着ているパミラ姫は、オーストラリアで見た時のような一般人の女性には見えなかった。公式の行事のために用意されているドレスを着て、いかにも王室のお姫様というような立ち居振る舞いをする。
ハヌルはセーターに厚手のスラックスという庶民的な服装で来てしまったことを後悔した。
「ハヌル、また会えて光栄よ。この国は寒いですね」
「パミラ姫。こちらこそ、お越しくださいましてありがとうございます」
言い間違えないように慎重になりながらハヌルは言い切った。
「今回の件では、あなたも大変でしたね。無事に帰国できて私も嬉しく思います」
ハヌルはステルス戦闘機に乗せられたことを思い出して吐き気がした。
パミラ姫とハヌルは
「伯父が講和会議に出席すると聞いて、私も連れて行ってほしいと頼み込んだのですよ」
パミラ姫はお淑やかな話し方をするが、目はいたずらっこのような、親しみやすい、ハヌルがオーストラリアで見たままの光を湛えていた。
「南半球から出たことがまだなかったのですよね」
「そうなの」
パミラ姫が満面の笑みで言う。
「初めてがあなたの国で嬉しいわ。世界で一番若い国。名前がない国。ハヌルが生まれて育った国」
ハヌルはパミラ姫が楽しそうにしている様子を黙って見ていた。名前がない国。そうだ。が
「パミラ姫、私は今回の戦争でが
パミラ姫がハヌルをじっと見つめた。ハヌルはその目を見つめ返した。
「あなたは答えを見つけたようですね。今を精一杯生きることは大事なことです。それがわかればどんな答えでも正解です。『建国の物語』の研究を怠らず、よい人生を送るのですよ」
ハヌルは、パミラ姫が差し出した手を握った。幸あれ、とどこかで誰かが言ったような気がした。それはきっと、が
GRACE 伊豆 可未名 @3kura10nuts
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