軽妙な語り口とは裏腹に、主人公の置かれている状況はかなり厳しいというか、かなりの悲壮感が漂っている。
自分を置いて変わっていくまわりの仲間たちを眺めながらも、自分は特別であると奮闘をする主人公の心情には、共感を抱くとともに、青臭い過去を見つめているようで吐き気すら催してしまう。
誰しもが一度は抱いたであろう自分という人間への期待。
そして掲げていたはずの大きな何か。
そういったものを思い出すとともに、それが叶わなかった時の絶望すらを想起させる。
この主人公がいったい今後どうなって行くのか、それは作者にしか知りえないが、願わくば抱いたなにかを掴みとってほしいと思う。それと同時に、絶望にまみれて野たれ死んでほしいとも思ってしまう。
そんな不思議な物語であり――
これはかつての僕たちの物語でもある。