「幻想 耽美」を含む小説

　食餌を終えた梟が声高に啼いた。月は歩み、少女は光のなかに、私は夜のなかにいた。少女が顎を擡げると、微風が赤の髪を揺らした。艶やかな赤は皓に曝され、降り注いだ皓は雫となって滴り落…

　その街の印象は灰色だった。 　透きとおっているわけでもなく、霞んでいるわけでもない。曇っているわけでもなく、ぼやけているわけでもない。透明度はひどく高く、彩度だけがひどく低い。…

　今日は少女の１４回目の誕生日。アリサは、とある事情で生まれてこの方、ガラス張りの小さな部屋からただの一度も出たことがなかった。自分なりの人生を模索する少女は、独りぼっち……の、…

うさうららさん主宰のwebアンソロジー #シズムアンソロウェブ 参加作品です。花と耽美、廃墟がテーマで、呪われた一族の幻想譚となっています。廃墟と化したホテルの奥にある温室で眠り…

僕たちはどうして懐かしさに惹かれるのだろう。 心地の良いノスタルジー。郷愁感。 子供の頃に聞いた音楽や作品を、妙に愛おしく思ってしまうのは、どうしてだろう。 波の音は、僕たちの…

お題箱で頂いた「酒と美青年」というお題で書いた600字強の掌編。耽美幻想目指してがんばりました。

「私は触れられない。いつも触れられない。私はいつまでも何にも触れられそうにない。」 道行く美しい女がいると、貪るように見つめ、その人生を夢想せずにはいられぬ男、彼の怠惰で病的な…

とある画家が、とあるモデルに対峙したとき……少しずつ、何かが壊れていく。 画家と、モデル、その二人の先にあるものは…… 画家は、一人の少女を描こうとしていた。 しかしそれは、…

　時は18世紀初頭、ドイツの錬金術師ベットガーは、金に勝る東方の至宝、磁器の生成に勤しんでいた。 　しかし作業は思うに任せなかった。 　そんなある日、神秘と憧憬のはるか東方より、…

平凡で退屈な日常に生きる僕。だけど、桜が満開のこの季節になると、どうにも落ち着かなくなってしまう。原因はきっと幼い頃に過ごした、あの懐かしい思い出の場所にあるに違いない。どうして…

デカダンスつまりは頽廃。 以前の「ブラックナイト」では事前に何を書くかは全く決めずに、夢現の状態に任せて書いたが、今回は少し勝手が違う。 テーマはデカダンス。いや、少しデカダンか…

ある大きな商家に、腹違いの兄弟がいた。行方知れずになった大好きな兄を追い、弟が辿り着いた場所は……。じっとり系兄弟BL。