概要
悩むことはない。こちらにひきずりこんでしまえばいい。
食餌を終えた梟が声高に啼いた。月は歩み、少女は光のなかに、私は夜のなかにいた。少女が顎を擡げると、微風が赤の髪を揺らした。艶やかな赤は皓に曝され、降り注いだ皓は雫となって滴り落ちた。
「彼が来たわ」
月あかりに濡れた茂みを見遣る少女をそのままに、私は夜に身を沈めた。大樹の洞に留まる梟が、羽毛に埋もれた首を廻らせて、少女の眼を追っていた。私は踵を返し、散歩の続きを楽しむことにした。
「彼が来たわ」
月あかりに濡れた茂みを見遣る少女をそのままに、私は夜に身を沈めた。大樹の洞に留まる梟が、羽毛に埋もれた首を廻らせて、少女の眼を追っていた。私は踵を返し、散歩の続きを楽しむことにした。