「離さない」を含む小説

老人介護施設に入居してきた麻子はサックスブルーの長い手編みのマフラーをぐるぐると首に巻いていた。 何とか麻子から取り上げようとするが、麻子は強く拒否して離さない。 それは亡くなっ…

たった５分。されど５分。それはどんなに頑張っても埋められない、私と彼との距離だった。 追いついた分、離されて……でも、それでも私は！

新村　湊　28歳。社会人。 私だって、普通に恋愛をする。 私だって、周りの友達のように結婚する。 ずっとそう思っている。 私にとってただひとり、忘れられない彼がいる。 逢いた…

　時は2000年代後半。先進国に住む人間は利便性と安全性を追求し、携帯端末は肌身離さず自らの体に嵌め込むようになっている。多くは手の甲に貼り付けてあるオールインワンのインターネッ…

口笛吹くよピリピリ、モツ煮込み……ゾロゾロ。こんなところに僕の幸せが。この小さな幸せを離さないようにしたい。隔週で迎えるワンダーランド。僕は自転車を飛ばして、今日も浅草に向かいま…

四谷零は、幼馴染の燕屋灯子のことが好きだった。しかし、恋人になりたいという気もしなかった。告白して、今の関係を崩すより、一番近い位置で見守っていられたらいい、と思っていたからだ。…

がたいが良くて理系脳の多趣味で気弱な若者が、どう考えても罠としか思えない課程を経てパイロットをさせられた。 そんな彼の配属されたのは諜報機関と同じ指示系統の「特殊な部隊」。ある才…

　その少女はいつでも、目を輝かせていた。 　何気ない日常は、どんな宝より、貴重であって、得難いものである。どうして俺はそれにすぐに気が付くことが出来なかったのだろう。どうして彼女…

当たり前のように訪れる朝。それは現世と異界の逆転の知らせ、なのかもしれない。 兄妹愛。それは愛憎の図式。 通学を共にする、兄妹。その心には願望と欲望が渦巻いていた。 幼い頃から…

あらゆる生活を捨て、1からの生活を夢みる女は逃亡中。グリーン車の自動ドアを開けた車内販売の女は胡散臭い。殺すか？ 鼻に付く消毒液の匂い、暴力と血の匂いが女を決して離さない。

母と兄と私の３人家族の中で育った、私の話。 そこは閉ざされた複雑な環境であった。 そして、その中にあった間違った深い愛や弱さを感じることができるようになってきたことを綴った。 …

〔～招待状～ 人の形は神の似姿。人形(ミクロコスモス)はあなたの願いを叶えるでしょう。 【――】を、あなたへ贈ります。肌身離さず持っていてくださいね。 それでは七月七日、ショコ…

日影《ひかげ》月斗《げっと》は二年前から家族になった『奏《かなで》』と言う愛犬が好き過ぎるあまり一日あたり100回は愛を囁いている。 名前の通り奏はメスである。 今日もまた奏…

｢いつものように、僕は夜の街を歩いた。｣ 満月の夜、黒猫は、いつもの散歩道で優しい暖かさをもった少女と出会う。内緒話をするように沢山の事を話してくれる彼女は甘く、優しい香りがした…

1人の少女がいた。 彼女は力を持っていた。 世界はそれを求めた。それを疎んだ。 混沌と低迷の末に、再び彼女は呼び起こされた。 数多の悪意と、張り巡らされた謀略と、敵対するべき甘…

高校に進学して勉強と部活に励んでいた茜。 幼なじみの菜々美とともに女子高生として楽しく生活を送っていた。 ある日，転校生の美月がやってきた。仲良くなってから一緒に過ごすようになる…

南谷 悠里(みなみや ゆうり)と北見 咲来(きたみ さくら)は、お互いとても仲のいい、けれど周りからは不釣り合いだと思われている親友同士。 けれど、悠里は知っている。 咲来はきっ…

自分の手から鉱石を食べる妹を羨み、憎む姉と、姉を惹きつけるために魅力的な自分を演出する妹の話

森深い辺境の地にある村では、五年に一度、流星群の日に星を空に帰す【星神祭】という儀式が行われていた。その村に住む少女セイラは、星を迎え、時が来たら空に帰す役割を担う【星守】の一族…