愛犬を愛でていたら隣の家の美人なお姉さんに惚れられた。

ちょこっと

愛犬を愛でる

 突然だが、俺の愛犬を紹介したい!

 とても頭が良く、伏せ、お手、おかわりをほんの数十分で覚えるぐらいだ。

 とても可愛らしく、散歩をしているだけで道行く人になでなでされている。

 とてもお利口で、リードが無くても散歩が出来る。

 流石に危ないから付けてるけどね。

 後はそうだな、好きだ!!

 俺は元々動物が苦手だったんだけど、一目惚れって奴だな。

 あぁ! 名前を言ってなかったな。

 名前は『かなで』

 なんでこの名前にしたのかは、メスである事と鳴き声が綺麗なんだよ。

 ビビッと来ちゃった。

 

 あ、因みに俺の名前は日影ひかげ月斗げっとだ。

 まぁ、名前の半分がインの漢字って事だけ言っておく。

 明日から高校一年だ。

 県外の高校に進学しているから友人も誰もいない。

 まぁ、中学の時も……ごほん。

 これ以上は聞かないでくれ。

 

 まぁ、あれだ、察してくれ。


 今、かなでは胡座をかいている俺の足に座っている。

 しかも、上目遣いでこちらを見ている。

 可愛すぎんだろ。


「かーなーでー、本当可愛いなぁ〜。よしよしよしよし! 俺、かなでに一目惚れしたんだよ! あぁ、かなで! 好きだ! 大好きだ! 愛してる! もういっその事結婚しよう! ずっと一緒にいるからな! 絶対離さない!」


「わふぅぅん」


「おっふ、可愛すぎんだろ」


 かなでの鳴き声は美声だ。

 ここまで綺麗に鳴く犬は他に見たことがない。

 

「愛してる、愛してる、愛してるよぉ〜〜〜かなで!」


 生涯で一番使う言葉が「愛してる」になるんじゃないだろうか。

 もう、ようになってしまった。


「よし! そろそろ散歩行こっか!」


「わん!」


 そうして俺はかなでと散歩をする為に家を出た。


「入学式もそろそろだし、身嗜み整えないとな。中学の二の舞にならないように。そのために親に無理言って県外の高校に進学したんだから! 可愛い彼女も作って青春を謳歌してやる!」


 道端でいきなり独り言を言っているわけだがちゃんと周りに誰もいないことを確認しているから安心してくれ。


 それはさておき、お隣さんの大学生のお姉さんめっちゃ可愛かったな。

 しかも大人っぽさもあるなんてどーなってんだよ。

 あんな人と付き合えたらどれだけ嬉しいことか。

 想像しただけで口元がにやけてくる。

 まぁ、それのせいでちゃんと名前を聞かなかったわけだが、表札を見て苗字だけは分かったからどうにかなるだろう。


 そんな事ばっかり考えていたからだろう。

 あのアパートの壁が薄い事はプライバシーに関わるから忘れるはずが無いんだけど、綺麗さっぱり流されていたんだ。

 


☆☆☆


「げ、月斗くんって私の事好きだったの? ひ、一目惚れって。そんな風に見えなかったのにな。壁薄い事気付いてないのかな? それとも………わざと?」


 月斗は302号室であり、その隣の303号室に住んでいる住人が先程の月斗のを聞いていた。

 いや、聞かされたと言った方が良いのか?


「だ、大丈夫よ、私。こんなの言われ慣れてるでしょ? いくら私の好きなタイプでもまだ相手は高校生なのよ? 流石に駄目だよ! しかも、初対面なんだよ! ちゃんと中身も見ないと!」


 303号室の住人は葛藤していた。

 月斗の言葉が何故か自分に言われているものだと思い込んでいる様子である。

 彼女の頬は真っ赤で耳まで赤くなっている。


「ど、どうせなら面と向かって言って欲しいなぁ。 はっ! 私何言ってんの! 私は年上が好き! 年上が好き! ふぅ、これで大丈夫よ! あぁ、大学のレポート全然進まない。早く終わらせないと!」


 彼女は一人、顔を真っ赤にしながらレポートを書き上げるていく。


「し、しかも結婚とか言ってたし。 はっ! 集中しなさい! 私! 明日の午後までなのよ!」

 

 にやけきっている顔をパンっと叩いて無理やり戻すが、彼女は気付いていないのだろう。

 徐々に口角が上がっている事に。

 なお、レポートを完成させたのは次の日の午前の事だった。

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