第3話 患者さんの家族、強すぎ問題

居酒屋の昼飲みが真っ只中。2杯目のビールが全員の手元に運ばれるころ、会話のボルテージがさらに上がる。彩香がジョッキを片手に話題を切り出す。


「ねえ、聞いて!昨日さ、ある患者さんの家族に“この薬、本当に効くんですか?”って詰められてさぁ。」


「おお、また来たね。『家族の医療マスター』タイプだ。」

翔太がくすりと笑うと、恵もすぐに反応する。


「いるいる!ネットで全部調べてきて、“先生に確認しました?”とか言う人。こっちはプロなんですけどーって思うわよね。」


「いや、まだネットで調べてくれるだけマシよ。たまに、“昔、テレビで見たんだけど”とか言ってくる人いない?」

と美里が続ける。


「わかる!この前なんて、“友達の娘さんが看護師なんだけど、この薬じゃないほうがいいって言ってたわ”って!」

と彩香も大きく同意する


「友達の娘さん看護師、最強説。」

と翔太がぼそりと呟くと全員が一斉に笑い出し、ジョッキを掲げて乾杯をする。


「まあでもさ、家族の気持ちもわかるけどね。大事な人を預けてるんだもん。でも、私たちにそこまで詰められても困るわよ。」と惠が愚痴るようにごぼすと美里も同意するように続ける。


「本当ね。しかも、詰めるだけ詰めた後に、“あ、でも先生の言う通りでいいです”って結局言うの。あれ何?」


「それ、会話いらなかったやつ。」

翔太が肩をすくめると、全員が納得の顔をして笑い合う。


「この前もさ、家族が『先生が言う通りにしますから、でも一応、もう一度念のために他の先生にも確認してもらえますか?』って。」

彩香が苦笑いしながら言うと、美里が反応する。


「それ、結局時間の無駄!“他の先生にも確認”って、どんだけ確認すれば気が済むんだよ!」

みんなが一斉に笑いながらも、うんうんと頷く。


「でも、逆に“先生が言うなら間違いない”って信じきってくれる家族もいてさ、もうちょっとこっちが怖くなっちゃうこともあるわ。」

恵が少し困った表情を見せると、翔太が共感するように言う。


「ある!あまりにも信じすぎて、逆に責任を重く感じるやつ。いや、こっちも人間だから…って思うけど。」


「結局、家族とのコミュニケーションが一番大事だよね。でも、夜勤中は疲れすぎて、どんなに説明しても全然伝わらないってこともあるし。」

彩香が疲れた表情で言うと、恵が優しく頷く。


「まあ、そう言っても、患者さんの家族ってやっぱり大切だからね。でも、たまに強すぎて気を使いすぎるときがあるのも事実。」

美里がジョッキを掲げると、みんなが一緒に乾杯。


「うわぁ、また愚痴ばっかりになっちゃった。でも、こういう話してると夜勤の疲れも吹っ飛ぶ気がする!」

と彩香が笑いながら話すとみんなが笑いながら乾杯を繰り返す。


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