第8話 看護師あるある、笑って解消!

居酒屋の座敷で、彩香、恵、美里、そして田辺師長が集まり、ジョッキを高く掲げて乾杯の声を上げた。翔太がいない代わりに、師長がいるだけで場の空気はどこか引き締まっている。


「いやー、夜勤明けの飲み会って最高!」と彩香が笑顔でビールを一口飲む。


「彩香、それ言うの何回目?」と美里が呆れた顔をしながらも、ビールを口に運ぶ。


田辺師長が苦笑しながら言った。「まあまあ、彩香みたいな若い元気が職場には必要なんだよ。でも、夜勤明けでこんなに元気な人、俺の若い頃にはいなかったけどな。」


「師長、昔も今も看護師は大変なんですよ!」と恵がすかさず突っ込む。「そういえば、夜勤中の『なんで今?』ナースコール、師長も経験ありますよね?」


「あるさ。」田辺師長がジョッキを置いて真顔になる。「一番衝撃的だったのは、『テレビが映らないんだけど』っていうコール。こっちは緊急処置中だったのにね。」


彩香が大笑いしながら、「それ、今でも全然ありますよ!昨日なんて『携帯の充電器どこ?』って言われましたもん!」


「ナースステーション、便利屋じゃないんだから!」と美里が同調して声を上げる。


「でも、一番のあるあるって、やっぱり『患者さんの家族対応』じゃないですか?」と恵がため息をつく。


「その通り。家族が患者よりも心配して、夜中に何回も電話してきたこともあったな。」と田辺師長が言うと、全員が深く頷いた。


「私、この前『先生にちゃんと確認しました?』って詰められましたよ。」美里が少し毒を込めて言う。「こっちは医師の指示に従ってるだけなんですけどね。」


恵がフォローするように、「家族が不安になるのはわかるけど、私たちも人間だってこと、忘れないでほしいわね。」と言った。


田辺師長が少し真剣な顔で語り出す。「家族対応は本当に大事だよ。でも、感情が高ぶってるときこそ、冷静でいられるのがプロだ。みんな、よく頑張ってるよ。」


その言葉に、全員が少し背筋を伸ばしながら、「ありがとうございます!」と声を揃える。


「でも、師長ってこんな真面目な話ばっかりしてるわけじゃないですよね?」と彩香が茶化すように言う。


「そうだな。俺だって愚痴くらい言いたい時があるさ。」と田辺師長が微笑む。「例えば、医師からの指示が曖昧なとき。『適当に対応しといて』とか言われたときは、俺もさすがにイラッとするよ。」


「それ、わかります!」と美里が勢いよくうなずく。「しかも『何とかしといて』の何とかが具体的じゃないとき、すごい困るんですけど!」


恵が笑いながら、「ああ、それね。しかも後で『あれ違うんだけど』とか言われたりね。」と続けた。


彩香がビールを飲み干しながら、「こういう話してると、職場のストレスがちょっとだけ楽になる気がします!」と笑顔を見せる。


「愚痴を話して笑い飛ばせる場があるのはいいことだ。」と田辺師長が満足そうに言った。「さあ、次は何の話をする?」


「恋愛の話とかどうですか?」と彩香がキラキラした目で言い、全員が笑い声を上げながら、次の話題へと進んでいった。

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