第22話 看護師の理想の彼氏像
居酒屋の席で、彩香、美里、恵の三人がジョッキを掲げながら話をしている。
彩香がテーブルに肘をつきながら、軽くほろ酔い状態で言う。
「ねえねえ、私たちみたいな看護師と結婚するって、どんな人が向いてると思う?」
美里が眉をひそめながらため息をついた。
「それ、結構ハードル高い質問よね。でも、シフトのことを理解してくれる人じゃない?」
恵がすかさず頷く。
「そうそう!例えばさ、夜勤明けで家事とか言い出されたら即アウトだよね。帰ったら寝たいに決まってるんだから。」
彩香が笑いながら手を振る。
「わかるー!夜勤明けは人間じゃないってくらい疲れてるのに、『昼間に時間あるからいいよね』とか言われたらブチ切れるわ。」
美里が静かに頷きながら続ける。
「それにさ、シフト制って予定合わせるの本当に大変じゃない?『週末は毎回休めないの?』とか言われたら、話にならない。」
恵がジョッキを片手に苦笑する。
「そんなの、看護師になった時点で週末の概念なんて消えてるよね。むしろ平日に休み取れるほうが得だし。」
彩香が勢いよく話を引き戻す。
「あとさ、仕事の話をちゃんと聞いてくれる人じゃない?愚痴とか、患者さんのエピソードとか、いろいろ聞いてほしいもん!」
美里が「そうそう」と合いの手を入れた。
「でもさ、それで的外れなアドバイスされるとイラッとしない?『もっと効率よくやればいいじゃん』とかさ。現場の大変さを全然わかってない人とか最悪。」
恵が笑いながらグラスを置く。
「それな!愚痴はただのガス抜きだから、『うんうん』って聞いてくれるだけでいいのよね。変に意見とか求めてないの。」
彩香が目を輝かせながら、「それは名言!」と手を叩く。
「聞くだけでいいんだよね。特に給料の話とか持ち出されると、途端に冷める。」
美里が少し苦い顔をする。
「給料の話ね……『看護師って稼ぎいいんでしょ?』とか言われると、そもそもそれ目当てかって思っちゃう。」
恵が真剣な表情で補足する。
「そうそう。『お前の稼ぎがあるから俺はちょっと休むわ』とか言われたら、即退場よね。」
彩香がさらに話題を広げる。
「あと、これ大事!看護師に変な幻想を持ってない人じゃない?」
美里が頭を抱えるポーズをとる。
「わかるー!『看護師って優しくて献身的なんでしょ?』とか言われると、『いやいや、仕事で十分尽くしてますけど』って言いたくなるよね。」
恵が声を出して笑う。
「そういうの、特にドラマとかの影響大きいよね。『天使のような看護師さん』ってイメージを押し付けられても、こっちはそんな余裕ないから。」
彩香が「ほんとそれ!」と勢いよく頷く。
「逆に『怖そう』ってイメージ持たれることもあるけどね。でもそれも違うのよ。怖いんじゃなくて、現場で生き残るために強くなっただけなの!」
美里が深く頷きながら、「本当に現場を知らない人と結婚するのって大変だよね」と言った。
「だからさ、看護師と結婚したいなら、まずは現場のリアルを知ることだと思うの。」
ここで恵がグラスを掲げて締めくくる。
「じゃあ、まとめると、シフトの理解があって、話を聞いてくれて、余計なことは言わず、幻想を抱いてない人!これが理想の相手ってことでいい?」
彩香が大きく頷く。
「そうそう!で、それができる人って、果たしているのかって話よ。」
美里が苦笑しながら言う。
「理想は理想ってことね。でもまあ、現場で出会った人のほうが理解はあるんじゃない?」
彩香が肩をすくめながらジョッキを持ち上げる。
「それがね、現場の人も忙しすぎて恋愛どころじゃないっていう現実があるのよ。」
全員が「それな!」と声を揃えて笑い、またジョッキを掲げた。
「じゃあ、私たちにぴったりな未来のパートナーに乾杯!」
居酒屋の熱気は、四人の笑い声でさらに盛り上がっていった。
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