第23話 世間の看護師像とのギャップ

美里がジョッキを置きながら、ふと真剣な顔をする。

「そういえばさ、世間の看護師のイメージって、実際と全然違うよね。ほんと、なんでああも美化されるんだろう?」


彩香が吹き出しそうになりながら笑う。

「え?それ、ドラマとかの話?天使とか言われるあれ?」


恵が真顔でジョッキを片手に応じる。

「そう、あれよ。『優しくて献身的で、常に笑顔で患者さんに寄り添う存在』みたいなやつ。実際、現場は全然違うのに。」


彩香が椅子に寄りかかりながら首を振る。

「そうそう、そんな余裕どこにあるのよ!現場じゃ笑顔どころか、眉間にシワ寄せて酸欠状態で走り回ってるっての。」


美里が頷きながら、自分の手を指さす。

「あとさ、手のこと言われない?『看護師さんの手って優しくてきれいそう』って。」


恵が美里の手を見てから、自分の手も見せながら乾いた笑いを漏らす。

「ははは、どこがよ?消毒しまくりでカサカサだし、むしろ作業員の手じゃない?」


彩香が自分の爪を見せながらため息をつく。

「ネイルもできないしね。『看護師ってオシャレそう』とか言われても、爪なんてボロボロだよ。むしろ健康診断で『乾燥ひどいですね』って言われる始末。」


恵がふと口を開く。

「あとさ、『献身的』って言葉も困るよね。患者さんのためならどんなことでもする、みたいに思われてるけど。」


美里が苦笑しながら言う。

「ほんと、それ!この前なんて、『靴下履かせて』って言われてさ。」


彩香が驚いた顔で振り向く。

「え、それ普通じゃないの?」


美里が苦笑いで続ける。

「いや、それがさ、『履かせるだけじゃなくて、ちゃんと皺を伸ばして整えて』って細かい注文つきだったのよ。しかも自分でできるのに。」


恵が爆笑しながらジョッキを叩く。

「それ、献身じゃなくて執事だわ!どっちかっていうと、介護よりだよね。」


彩香が思い出したように手を挙げる。

「あ、あと!『看護師さんって体力ありそうでいいね』とか言われるけど、それも間違いだよね。」


美里が「それな!」と頷きながら言う。

「夜勤明けとか、ボロボロで家にたどり着くだけで精一杯なのに。『走り回ってるから筋肉つきそう』とか言われるけど、疲れでガリガリになるだけだよ。」


恵がさらに笑いをこらえながら、彩香を指差す。

「そういう彩香は、居酒屋に来る元気はあるけどね!」


彩香がにやりと笑う。

「それは別腹!お酒と脂っこいものはエネルギー源だからね!」


美里がため息をつきながら、グラスを口に運ぶ。

「ほんと、世間の『健康で元気な看護師』イメージとは真逆だよね。」


恵がふと、テーブルを叩いて笑い出す。

「極めつけはこれよ、『看護師ってモテそう!』ってやつ。」


彩香が思わず飲みかけのジョッキを置いて吹き出す。

「それそれ!『白衣の天使』ってやつね。でも、現場じゃ白衣どころかスクラブだし、汗だくで髪ボサボサだからね!」


美里が冷静に突っ込む。

「そもそも、仕事で疲れてるから恋愛する余裕なんてないのよ。夜勤のある生活でどうやってデートしろっての?」


恵がさらに続ける。

「で、たまに合コン行っても、『献身的で家庭的な人』って勝手に期待されるんだよね。それが逆にハードル上がる。」


彩香が笑いながら頭を振る。

「家庭的どころか、夜勤明けにコンビニ弁当の生活なのにね!」


三人が一息ついて、ジョッキを掲げる。

「世間のイメージなんてそんなもんよね。」


恵が締めくくるように笑いながら言う。

「でもまあ、そのおかげで話のネタには困らないけどね!」


彩香と美里が笑いながら頷き、また乾杯の音が響く。

居酒屋の熱気とともに、三人の笑い声は止むことがなかった。


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