何でもこの作品、筆者がいろんな作品を公募や持ち込みして18年振るわず、最後と思って更新している作品らしいです。
読んでみればたった六話で18年分積み上げてきたであろう描写が詰め込まれており非常にインパクトがありました。
名ばかりの新撰組とあらすじにあるように名前だけ、されどそういう名前だからこその主人公の苦悩やヒロインのノリノリな描写で性格が現されて非常にわかりやすい。
関係性も丁寧に描かれていて、幼馴染なんだなと思わせる描写が自然に組み込まれていました。
事件が起こるまでの過程も自然で謎も気になる要素。
最初こそヒロインの性格に難有りと感じるかもしれませんがそこは「人」として描かれているからだと話を読んでいてわかるかと思います。ジャンル通りドラマが描かれています。
名前は本来地名などにもあるように大きく意味を孕むもの。新撰組と同じ名のキャラたちがどんな結末を迎えるのか期待大の作品かと思います。
正直埋もれてるの勿体無いので少しだけでも伸びて!と願いつつ。
現代和風ファンタジーやヒューマンドラマが好みの方にぜひおすすめです
沖田洋という女に、俺の人生は振り回され続けてきた。
生まれたときから、幼馴染としてセット扱いされてきた土方守。
付き合ってもいないのに噂ばかり広がり、何をするにも沖田が絡んでくる。
そんな人生に辟易しながらも、気がつけば大学4年生。
だがある日、沖田の身体に異変が起こる。
生まれつきあったはずの痣が、異様なまでに広がっていく。
さらに、彼女の家で見つかった"読めるはずのない本"。
そして、その本を読んだ直後に発生した大地震。
「これは、ただの偶然なのか?」
沖田の家族は何かを隠している。
彼女の父は「パンドラの箱を開けた」と呟き、沖田は忽然と姿を消した。
彼女はどこにいるのか?
そして、あの痣と本の正体とは?
沖田を追い、たどり着いたのは"八幡様"。
鳥居の奥から響く謎の声、異様な雰囲気、そして彼女の叫び。
沖田が逃げる、何かから追われながら。
幼馴染という"呪縛"に囚われた青年が、
決して後戻りできない"真実"へと足を踏み入れる。
主人公である守、ヒロインである洋、そして二人の幼馴染みである晴太の三人を中心として、洋が受けた「邪神の呪い」に対抗していく物語
三人の関係性が面白く、守は文句タラタラだが洋のことを常に気に掛けており、晴太は洋に子供の頃から好意を抱いている
「守られる対象」としてはいささか気の強すぎる洋の呪いを解くために、三人で奮闘するのがストーリーの主軸だ
さまざまな謎や疑問が散らばり、読者を飽きさせない工夫がなされているし、何より文章力が高いので読みやすく、文字を追うだけで面白い
地の文が多くても平気な方は、是非
※利用停止措置を受けたため、本レビューは再投稿となります
名は体を表す。
名前は大切な人からもらう最初の祝福のようなものだと思います。
そこに込められた願いが、そのものやひとの本当の姿を形つくる。
では、当人たちが己の意志で決めることのできない名字という祝福。
名は体を表すというならば、名字は運命から授かる呪いのようなものといえるのではないでしょうか。
本作は新撰組と同じ名字を背負う登場人物たちが、ヒロインにかけられた呪いを解くために、様々な困難を乗り越えていく人間ドラマです。
一見すると、ラブコメにも思えてしまうほど、主人公とヒロイン、それを取り巻くキャラクターたちのコミカルな掛け合いと、色鮮やかな心理描写が特徴的です。
ですが、彼らへ襲いかかるのは少々理不尽すぎる事件ばかり。ことの大きさはもちろんのこと。こんなのどうしたらいいんだ!と思ってしまうほど絶望的な困難なのです。
そんな事件に見舞われる中で見せる。
キャラクター同士の関係性と情熱的なセリフの数々。時には自分の命さえも、相手の為ならば差し出してしまうのではないかと思うほど、狂気にも似た他者への想いと葛藤。
関係性なんてどうだっていい。自分が今したいから、したいようにする。
一度スイッチが入った時の凄まじい感情の爆発には体を熱くさせるものがあります。
そんなコメディとシリアスの塩梅がこの作品の良きアクセントになっているのだと思います。
名前が新撰組だから、彼らが今ここにいる。
だが、それだけじゃない。
呪いに打ち勝つ為の名字と名前。
彼らのフルネーム。
名は体を表すというならば、その重い名字と呪いに抗うだけの祝福を、彼らはすでに受け取っているのかもしれない。
(一我儘目読了時点)
素晴らしい作品をありがとうございました。
新撰組の著名を用いることで作中への没入感、奥行きを持たせつつ、その枠組みから脱却するために神話やミステリー要素を取り入れて独自性を確立させているのが面白かったです。
作者の語彙力や表現力が優れているのもありますが、文体は滑らかで読みやすく、程よいテンポで話が進んでいきます。
ヒロインがかなりガサツで序盤不安を覚えましたが、読み進めるほどに好きになれるタイプでしたので直ぐに払拭されました。
属性もてんこ盛りにされているのはヒロインだけですし、そのてんこ盛り具合も蓋を開けてみれば「それはそうなるよね」と理解できる理不尽な産物。或いは先祖のツケ。
まだまだ更新話数を見てみるとお話の入り口までしか読めていませんが、飽きることなく読めそうです。
現代ファンタジー初心者の方にもオススメしやすい作品でした。