第12話 続・迷惑すぎる患者さん
スプリンクラー騒動の話が一段落し、彩香がジョッキを置いて言った。
「いやー、トイレでタバコも迷惑だけど、他にも“すごいの”いっぱいいるよね?」
その言葉に美里がうなずきながら、冷えたジョッキを片手に口を開く。
「いるよ。例えば、酔っ払いが救急で運ばれてきた話とかね。」
「酔っ払い?」と恵が興味を示すと、美里はニヤリと笑いながら続けた。
「そう、急性アルコール中毒で救急搬送されたんだけど、そのまま入院になってさ。なんとか落ち着いたと思ったら、次の日には勝手に病室で飲み始めたのよ。」
彩香が目を丸くして驚く。
「えっ!?病室で?どうやってお酒手に入れたの?」
「本人が持ち込んでたんだよ。バッグの中にウイスキーのボトル隠しててさ。」美里が肩をすくめて話すと、恵が大笑いしながら手を叩いた。
「何その根性!いや、迷惑だけど、逆に感心するわ。」
「感心してる場合じゃないっての。結局、点滴外して自分でボトル開けて飲んでて、看護師が見つけて大騒ぎ。事務に報告して注意されたけど、本人は『ストレス発散のためだ』って開き直る始末。」
彩香が苦笑いしながら言う。
「ストレス発散のためって、病院で飲むのはちょっとね…っていうか大迷惑すぎるよね。」
ここで恵が思い出したように話し始めた。
「それで言えば、私の病棟でもすごい患者さんがいたよ。若い男の子だったんだけど、病院抜け出して遊びに行ったのよ。」
美里が興味津々で聞き返す。
「遊びに?どこに?」
「最初は近くのコンビニとかかと思ったんだけど、あとで聞いたら風俗店だったの。」
彩香が吹き出しそうになりながら驚く。
「えっ!?入院中に?それ、大丈夫だったの?」
「いやいや、全然大丈夫じゃないよ。看護師がいないことに気づいて探して、病院に戻った時に問い詰めたら『ちょっと運動がしたかった』とか言ってて。どの口が言うんだって感じよね。」恵が呆れた顔で話すと、美里も頭を抱えた。
「それ、強制退院とかになったんじゃない?」と彩香が尋ねると、恵は苦笑しながらうなずいた。
「うん、事務に報告して、即座に退院させたよ。でも、その後も他の病院で同じことして出禁になったって噂聞いた。」
美里がため息をつきながら言った。
「病院を何だと思ってるんだろうね。こっちが命預かってるっていうのに…もう少し自覚を持ってほしいよ。」
彩香が笑いをこらえながらジョッキを掲げた。
「いやー、私たちもストレスたまるけど、患者さんたちもいろんな意味で個性強すぎだよね!はい、次の乾杯は迷惑すぎる患者さんたちに!」
美里と恵も「それいいね」と笑いながらジョッキを掲げ、またしても乾杯の音が居酒屋中に響き渡った。
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