第20話 医療ドラマないない
熱気漂う居酒屋の一角。飲み物も料理も進み、彩香、美里、恵、翔太の4人は医療ドラマについて熱く語り合っていた。きっかけは彩香がぽつりと漏らした一言だった。
「この前見たドラマさ、手術中に『このままじゃダメだ!』とか言いながら奇跡の手技を閃くシーンがあったのよ。あれ、現場じゃ絶対ありえないよね!」
彩香の言葉に、美里が箸を置きながら即座に反応する。
「ほんとそれ。手術中にひらめきなんて起こらないし、もし起こったら大問題。術前にちゃんと計画立ててるんだから、想定外なんてことになったら会議だよ、会議。」
翔太がビールを一口飲み、苦笑いを浮かべた。
「あと、手術室ってドラマみたいに派手じゃないよな。音楽とか薄暗い照明とか、雰囲気出しすぎ。現実は明るいライトでがっつり照らしてるし、黙々と作業する感じだし。」
「そうそう、音楽流してるのも普通のクラシックとかじゃなくて、意外とアップテンポな洋楽とかなんだよね。」
恵が懐かしそうに笑いながら言うと、彩香が「うちの病院のあの先生、アニメソングかけるって噂あるよね?」と突っ込み、場が爆笑に包まれた。
「あとさ、ドラマだと手術が長時間でも誰もトイレ行かないよね?」
彩香の疑問に、恵が「確かに。6時間手術とか耐えられないでしょ。でもさ、現実では交代なんて滅多にしないのよ。そこはプロ意識が試されるのよね。」と補足する。
美里は腕を組みながら「でも一番笑っちゃうのは、患者さんの状態が悪化してもドラマでは絶対に助かること。現実だとそんな簡単じゃないのにさ。」と付け加えた。
翔太も頷き、「ドラマの患者さんって、状態が悪くてもきれいな顔してるよね。俺たちの現場じゃ、汗だくだったり血だらけだったり、あんな美しいシーンにはならないよ。」と話し、またも場が笑いに包まれる。
会話はさらに医師の描写に話題が移った。
「ドラマだと、カリスマ医師が患者を一目見ただけで病名を当てるシーンとかあるじゃない?」
美里がグラスを持ちながら言うと、翔太が「それってもう占い師だよな。」と突っ込み、全員が大爆笑。
「しかも、あのカリスマ医師って患者さんに優しくて、看護師にも神対応じゃない?」
恵が皮肉混じりに話すと、彩香が「あんな医師、うちの病院にはいないよね!現実は短い時間で診察して、看護師には『これやっといて』って指示するだけ!」と声を上げた。
翔太が肩をすくめながら、「俺なんて患者さんに『先生』って呼ばれて、その場で訂正したのに、『先生なんだからわかるでしょ』って責められたぞ。」と苦笑いを浮かべた。
「わかる!ドラマだと看護師が恋愛相手になることも多いけど、現実はむしろ先生との間には壁がある感じだもんね。」
彩香の意見に、恵が「まあ、壁どころか堀みたいなもんよ。」と笑いを誘った。
会話はさらに看護師の描写に及ぶ。
「看護師が患者さんにずっと寄り添ってる描写も無理があるよね。」
美里が冷静に指摘すると、恵が「リアルだと、患者さん10人を受け持ちながらナースコール対応して、記録も書いて…そんな余裕ないよね。」と実情を語る。
翔太が「あと、ドラマの看護師って無駄にオシャレじゃない?」と笑いを交えながら指摘すると、彩香が「翔太君、夜勤中のすっぴんの私たち見て言ってる?一瞬、誰かわからないとか言ったくせに!」とツッコミ、再び爆笑が巻き起こった。
最後に、彩香が声を張り上げた。
「結局さ、ドラマって私たちの現場を美化しすぎてるんだよね。現実がこんなドラマチックなら、毎日もっと楽しいはず!」
美里が「まあね。でも現実の大変さは大変で、私たちだけの誇りでもあるんじゃない?」と真顔で言い、全員が少しだけしんみりとした空気に包まれる。
翔太が照れくさそうに、「じゃあさ、現実の医療現場にも乾杯ってことで。」と言い出し、全員が笑いながらグラスを掲げた。
「私たちの職場がドラマみたいになったら、それはそれで困るけどね!」
彩香の一言で、笑いと共に会話は締めくくられた。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。もしこの作品を楽しんでいただけたなら、ぜひ評価とコメントをいただけると嬉しいです。今後もさらに面白い物語をお届けできるよう努力してまいりますので、引き続き応援いただければと思います。よろしくお願いいたします。
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