第13話 ここが凄いよ!神患者様
迷惑患者の話で盛り上がった後、彩香がジョッキを置いて笑いながら言った。
「いやー、でもさ、迷惑患者ばっかりじゃないよね。たまに“神患者”って言いたくなる人もいる!」
美里が興味を示し、少し前のめりになって尋ねた。
「神患者?例えばどんな人?」
彩香は頬杖をつきながら、ほんわかした表情で話し始めた。
「この前いたおばあちゃんなんだけどさ、認知症も少し入ってて、最初は夜中にナースコール連打されて困ったんだ。でも、夜勤の合間に話し相手してたら、何とも言えない癒される話し方でさ。」
恵が笑いながら言った。
「癒し系のおばあちゃんね。何話してくれたの?」
「昔の恋愛話とか、戦後の苦労話とか。聞いてるとこっちのイライラがスーッと消えていく感じで。しかも、『夜勤で大変なのにありがとうね』って、いつも言ってくれるの。」彩香が目を細めて語ると、美里がほっこりした顔で言った。
「そういう人いるよね。『ありがとう』って一言が、どれだけ嬉しいか分かってる感じの人。」
恵もそれに続けて言った。
「うちの病棟でもいたなぁ。患者さんが家族に『看護師さんたちには絶対迷惑かけちゃダメよ』って言ってくれてて、家族まで気遣いが素晴らしいの。あの一家、病院にとって宝物だったわ。」
彩香が頷きながら言った。
「そうそう!家族も神対応だと、ほんとに助かるよね。」
ここで美里がジョッキを持ちながら、少し得意げに話し始めた。
「でもね、私が出会った神患者は、それだけじゃない。血管が完璧なの!」
彩香と恵が同時に「血管!?」と声をそろえて驚いた。
「そう、採血するときに一発で決まるし、ルートもスムーズに取れる。しかも、毎回『大変なお仕事よね。頑張って』って言ってくれるんだよ。」美里が感動したように語ると、彩香が感心しながら言った。
「それ、ナースの夢じゃん。神患者中の神患者だね。」
恵も笑いながら言った。
「血管が神ってすごいなぁ。もうその人だけ採血担当したいよね。」
彩香がまたジョッキを掲げて言った。
「よし!次の乾杯は神患者に捧げましょう!」
全員が笑いながらジョッキを掲げ、乾杯の音が響く。
飲み会も終わりが近づき、彩香がほろ酔いの顔で締めくくった。
「いやー、今日も愚痴言ったり笑ったりしてスッキリしたね。でも、結局さ、どんな患者さんでも最後は“ありがとう”の一言で救われる気がするんだよね。」
美里と恵も頷きながら、それぞれジョッキを置いた。
「そうだね。だからこそ、この仕事続けられてるんだろうね。」と美里が言い、恵が付け加えた。
「よし、また次の飲み会で、神患者エピソードもっと増やしておこう!」
3人は笑顔で会計を済ませ、また明日の仕事に向けて帰路についた。
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