第11話 迷惑すぎる患者さん
1杯目のビールが程よく進み、三人の看護師たちはそれぞれの「迷惑な患者さん」エピソードを持ち寄り始めた。彩香が少し呆れた顔で口を開いた。
「ねえ、昨日なんだけど、病棟のトイレでタバコ吸ってたおじさんがいてさ。」
「またか!」と美里がすぐに反応する。「喫煙所ないからって、なんでわざわざトイレで吸うかな。病院のど真ん中なんだよ?」
彩香は軽く頭を振りながら続けた。
「しかもね、スプリンクラーが作動しちゃったの。」
「えっ!?まさかの火災報知器パターン?」と恵が驚きながら問いかけると、彩香は苦笑いを浮かべる。
「そう。タバコの煙で感知器が反応して、病棟中が水浸しになったの。患者もスタッフもパニックよ。」
美里が目を丸くして言った。
「それ、事件じゃん!で、タバコ吸ってたおじさんはどうしたの?」
「そりゃバレバレだよね。現場にいたスタッフが問い詰めたら、『ストレスでどうしようもなくて』だって。」彩香が肩をすくめると、恵がため息をつきながら言った。
「いやいや、ストレスならわかるけど、それで病院のスプリンクラー作動させるのは勘弁してほしいわ。」
美里も呆れ顔で同調する。
「ほんとだよね。喫煙所をなくすのもどうかと思うけど、だからってトイレで吸っていいわけじゃないって、普通はわかるでしょうに。」
「その後、事務の人たちが対応に追われて、スタッフルームに“当面の禁煙対策案”みたいなプリントが置かれてたんだけど、どれも現場に丸投げする内容でさ。」彩香がため息交じりに話すと、恵が思わず笑い出す。
「結局、現場にしわ寄せ来るやつね。まあでも、スプリンクラー作動はちょっと新しいわ。タバコ吸っててここまで大事になるなんて。」
彩香はさらに思い出したように話を続けた。
「しかも、そのおじさん、注意されても『昔は病院にも喫煙所があった』って逆ギレしてたよ。」
「うわ、それ聞いたことある!」と美里が反応する。「昔話持ち出してくる患者さん、結構いるよね。“昔の医者はもっと優しかった”とか。」
「あるある!」と恵が笑いながら頷く。「それにしても、スプリンクラーで水浸しの病棟とか、ほんと勘弁してほしいわ。次は火災報知器鳴らさないように祈るしかないね。」
「ほんとだよ。でも、これもいつかネタになるからいいけどさ!」と彩香が言い、ジョッキを掲げた。
「じゃあ、次の乾杯は、迷惑患者に振り回されながらも笑い飛ばせる私たちに!」
「それいいね!」美里と恵もジョッキを掲げ、三人の乾杯の音が居酒屋中に響き渡った。
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